日本の花文化を知るー第一歩としてー

その文化圏の古典に登場する花の品種、登場の仕方、頻度を比較する
各地域の歴史文化と花との関わりを知るのに、その時代の「古典」にいかに多くの種類の花の名前が登場するか、その品種と登場回数を調べ、比較するという方法があります。
単純な比較が唯一正しい方法というわけではありませんが、一つの方法として、考えられる入口といえるかもしれません。

もちろん、各文化圏でそれぞれの古典自体の内容、文化的な位置づけを無視して、単純に比較するのが最良の方法とはいえません。
このサイトでは、その詳細な位置づけと比較方法は、別途に各地域の園芸文化研究の中で「文献研究」として展開する予定です。
この資料庫では、一つの指標として、こうした比較方法も基礎知識に持っておいた方がよいと考え、掲載しました。

「花と木の文化史」からの試み
中尾氏の「花と木の文化史」でも「日本の花文化」を西欧や中国の花文化を古典に登場する花に着目して比較しています。

日本の「万葉集」に登場する花の品種やその登場頻度は、西ヨーロッパ「聖書」、さらには世界の古典とされるインド「アーユル・ベーダ」、中国「詩経」に比較して、非常に数が多い点に注目して、日本人と日本文化にとって花が大きな位置を占め、より花好きな民族・文化であることを説明しています。


<以下、「花と木の文化史」より転載>

万葉集に登場する花ばな
奈良朝の末期頃には「万葉集」が編集されている。
当時は、唐風にならって奈良の都が造営されており、文物全て唐風にならい、知識階級も成立しており、花卉園芸文化の担い手は、安定した社会階層に成熟したとみられる。
「万葉集」の中には約166種の植物が登場する。この数は「聖書」より多く、世界の古典のインドの「ベーダ」、中国の「詩経」より多いようである。
つまり「万葉集」は世界の古典の中でいちばん多くの植物名が登場するのである。

<転載、以上>

次の講義資料では、実際に中尾氏が「万葉集」と「聖書」に登場する植物を比較した内容を見ていきましょう。