小学校の第3〜4、5〜6学年では、「社会」教科が「郷土学習」を目的とした内容になります。ここが低学年での「生活」科目を受けての郷土(学校周辺の地域)学習への入口になります。少し長くなりますが、実際の指導要領の内容を以下にご紹介します。
全体は、その他の指導要領同様に大きく、「目標」「内容」「内容の取扱い」の三項目にわかれています。先ず、3〜4年生の「目標」と「内容」「内容の取扱い」を見てみましょう。
<文部科学省・新指導要領・小学校各教科第2節「社会」より、転載>
目標
(1)
地域の産業や消費生活の様子,人々の健康な生活や良好な生活環境及び安全を守るための諸活動について理解できるようにし,地域社会の一員としての自覚をもつようにする。
(2)
地域の地理的環境,人々の生活の変化や地域の発展に尽くした先人の働きについて理解できるようにし,地域社会に対する誇りと愛情を育てるようにする。
(3)
地域における社会的事象を観察,調査するとともに,地図や各種の具体的資料を効果的に活用し,地域社会の社会的事象の特色や相互の関連などについて考える力,調べたことや考えたことを表現する力を育てるようにする。
内容
(1)
自分たちの住んでいる身近な地域や市(区,町,村)について,次のことを観察,調査したり白地図にまとめたりして調べ,地域の様子は場所によって違いがあることを考えるようにする。
ア 身近な地域や市(区,町,村)の特色ある地形,土地利用の様子,主な公共施設などの場所と働き,交通の様子,古くから残る建造物など
(2)
地域の人々の生産や販売について,次のことを見学したり調査したりして調べ,それらの仕事に携わっている人々の工夫を考えるようにする。
ア 地域には生産や販売に関する仕事があり,それらは自分たちの生活を支えていること。
イ 地域の人々の生産や販売に見られる仕事の特色及び国内の他地域などとのかかわり
(3)
地域の人々の生活にとって必要な飲料水,電気,ガスの確保や廃棄物の処理について,次のことを見学,調査したり資料を活用したりして調べ,これらの対策や事業は地域の人々の健康な生活や良好な生活環境の維持と向上に役立っていることを考えるようにする。
ア 飲料水,電気,ガスの確保や廃棄物の処理と自分たちの生活や産業とのかかわり
イ これらの対策や事業は計画的,協力的に進められていること。
(4)
地域社会における災害及び事故の防止について,次のことを見学,調査したり資料を活用したりして調べ,人々の安全を守るための関係機関の働きとそこに従事している人々や地域の人々の工夫や努力を考えるようにする。
ア 関係機関は地域の人々と協力して,災害や事故の防止に努めていること。
イ 関係の諸機関が相互に連携して,緊急に対処する体制をとっていること。
(5)
地域の人々の生活について,次のことを見学,調査したり年表にまとめたりして調べ,人々の生活の変化や人々の願い,地域の人々の生活の向上に尽くした先人の働きや苦心を考えるようにする。
ア 古くから残る暮らしにかかわる道具,それらを使っていたころの暮らしの様子
イ 地域の人々が受け継いできた文化財や年中行事
ウ 地域の発展に尽くした先人の具体的事例
(6)
県(都,道,府)の様子について,次のことを資料を活用したり白地図にまとめたりして調べ,県(都,道,府)の特色を考えるようにする。
ア 県(都,道,府)内における自分たちの市(区,町,村)及び我が国における自分たちの県(都,道,府)の地理的位置,47都道府県の名称と位置
イ 県(都,道,府)全体の地形や主な産業の概要,交通網の様子や主な都市の位置
ウ 県(都,道,府)内の特色ある地域の人々の生活
エ 人々の生活や産業と国内の他地域や外国とのかかわり
内容の取扱い
(1)
内容の(1)については,方位や主な地図記号について扱うものとする。
(2)
内容の(2)のイについては,次のとおり取り扱うものとする。
ア 「生産」については,農家,工場などの中から選択して取り上げること。
イ 「販売」については,商店を取り上げ,販売者の側の工夫を消費者の側の工夫と関連付けて扱うようにすること。
ウ 「国内の他地域など」については,外国とのかかわりにも気付くよう配慮すること。
(3)
内容の(3)については,次のとおり取り扱うものとする。
ア 「飲料水,電気,ガス」については,それらの中から選択して取り上げ,節水や節電などの資源の有効な利用についても扱うこと。
イ 「廃棄物の処理」については,ごみ,下水のいずれかを選択して取り上げ,廃棄物を資源として活用していることについても扱うこと。
(4)
内容の(4)の「災害」については,火災,風水害,地震などの中から選択して取り上げ,「事故の防止」については,交通事故などの事故防止や防犯を取り上げるものとする。
(5)
内容の(3)及び(4)にかかわって,地域の社会生活を営む上で大切な法やきまりについて扱うものとする。
(6)
内容の(5)のウの「具体的事例」については,開発,教育,文化,産業などの地域の発展に尽くした先人の中から選択して取り上げるものとする。
(7)
内容の(6)については,次のとおり取り扱うものとする。
ア ウについては,自然環境,伝統や文化などの地域の資源を保護・活用している地域を取り上げること。その際,伝統的な工業などの地場産業の盛んな地域を含めること。
イ エについては,我が国や外国には国旗があることを理解させ,それを尊重する態度を育てるよう配慮すること。
<転載、以上>
上記の内容にもあるように、その郷土としての対象範囲は、
「市区町村」がメインで、その先の「都道府県」までという範囲で、実際の地図などや各種資料を駆使すること。
また、実際に見学、調査し、まとめるという授業の組み立て方を勧めています。
実際の学習プログラムやモチーフは、それぞれの地域(学校)ごとに「郷土学習」は、独自の内容で実施していることがほとんどのようです。
まず、その地域の地史を地誌などの文献を基本に学習させて、その上でその地域の周辺の郷土関連の博物館や歴史的な施設などを見学したり、グループごとに研究班を作り、発表させたりしているようです。
既存の郷土学習を基本に発展させる
本プロジェクトでは、実施する以前から、それぞれの学校で実施されてきた特徴的で伝統的な郷土学習は、急に変えるべきものとは考えていません。そうしたプログラムを基礎に、より発展させるためにこそ、「植物・園芸文化」モチーフを導入するのが良いと考えています。
つまり、本プロジェクトの地域ごとのプログラム開発には、先ず、現状のそれぞれの学校で実施されている「郷土学習」理解が大事だと考えています。
実際の学習内容をヒアリングしたり、一度、その計画現場に参加したり、内容分析をすることが事前準備として、必要不可欠になります。当然、学校ごとに現場と今まで行ってきた「郷土学習」について、情報提供依頼とその現状などをヒアリングした上で基本設計を行います。
次の章以降では、
1)郷土学習の素材の発見と参考資料、参考文献入手の方法理解
2)学習方法(グループ発表形式など)の分析
3)校外学習施設の選定と実施概要分析
という順にそれぞれの学校での郷土学習プログラムを検討していきます。その上で、どのように「植物・園芸文化」モチーフを導入していくかを基本設計していきます。