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今回の第68回協議会の公開授業では、会場となった根岸小学校第3学年の授業(笠松知恵教諭)を参観しました。

1,2年の「生活科」から、始めて、「社会科」に進み、歴史や地理、社会を学ぶ段階で「郷土教育」がどのような位置づけで授業に消化されていくのかを実際に見るのが目的でした。

第69期は、是非、3-4学年部会に参加し、こうした視点で「郷土教育」の可能性を広げていくための研究に参加できたらと考えています。


この公開授業は、小単元「台東区をしょうかいしよう」(全12時間)がテーマでした。

【学習指導要領】からの目標とする内容は、身近な街を知るとともに「市域の様子は場所によって違いがあることを考えるようにする」というもので興味深い点でもありました。

それぞれのグループに分かれて調査、ヒアリングや研究の結果、「観光の街・台東区」を導き出していました。
公開授業となった12時限目の授業では、あらかじめ「台東区のキャッチフレーズを考え、台東区の良さを再度、認識できるようにする」もので、その目標に向けた授業という展開でした。

先ず、観光客数が東京都で第一位、国内では、京都についで、第二位という話から、台東区のマスコットキャラクター登場に続いて、マスコットから頼まれて、「台東区の観光キャッチフレーズを皆で考える」という授業展開になりました。

【授業への個人的な感想】

1)第12時限目での「キャッチフレーズを見つけ、(観光の街を)再認識する」というまとめについて


教える側が「地域社会に貢献する、再認識」という意味を「キャッチフレーズを考える」という点に昇華していくのは、大人的な発想に縛られているような印象を持ちました。
確かに、「観光の街・台東区」に最終的な展開を計画しているということもあり、意識的にこうした流れをつくっているのは、仕方ないとしても、授業展開中に発現される子供の素直な発想や着想、興味の典型を捉えることも重要な気がしました。

その意味で、小学生には、「住んでいる場所を良く知ること」=「地域社会に貢献する入口」とした意識を持たせることが重要なのではないでしょうか。
「もっと多くを知りたくなるための最初の経験」という授業を期待したいものです。そのためには、最初の興味のきっかけを作り、その後にもっと知るための方法や親や周囲の人々との交流やより知るための情報を得る方法(図書館、Web、良く見る、良く聞く機会づくり)などを教えるのが重要な第一歩という気がします。:

2)順位付けで興味を喚起する手法について

確かに「第一位」は興味をそそられるものかもしれません。全国第2位もそうした点からの導き出された手法でしょう。ただ、順位にすごいと驚くより、自分の街の新たな側面を発見して、驚き、より知りたいとさらに進んでいくような内容を選定することも必要なのではないかと思えます。
数字での発見なら、居住人口と昼間の移動で通過する就業人口、観光人口変化、さらには業種別の就業人口にもう少し深く入っていけるようなテーマも良いように思います。もちろん、さらに狭い自分たちの周囲のエリアや町などの範囲(根岸や小エリア)ごとに異なるでの統計数字を知ったり、自分の親たちの業種も改めて知る(親もそのエリアの構成員であることの再認識)ことも、より身近な体験につながるように思います。

<当日授業以外で気になったこと>
私が気になったのは、壁に貼られた子どもたちが「浅草寺」「仲見世通り」をヒアリング調査した際の感想を書きだした多くのカード、附箋でした。


特に興味深かったのは、子供たちの
「なぜ、せんそうじというのか、知りたかった」
「なぜ、がいこくのひとがおおく、くるの?」
「靴やさんに見たことのない、くつやはきものがあった
「みたことのないものをうっている、おみせがあった」」

などという素朴な疑問が数多く見られたことです。

こうした素朴な疑問にも答えられるような準備をすることで、より知りたい子どもたちにさらに調べたい、知りたいという意欲を掻き立てることができるようになるのではないかということです。

また、根岸小学校のある鶯谷駅前の台東区内での位置づけを江戸時代の絵図で「下谷」「日暮里」「浅草」などからの位置づけと比較し、発見させること(歴史を始めて導入する第3学年への試み)も子供の興味を喚起させるのではないでしょうか?観光名所だけでなく、この小学校の地勢も発見できるような歴史的な土地勘を育てる入口として、位置づける必要もあったのではないかと思います。もちろん、それぞれの住まいの場所も含めて…。5-6年の社会科へのつなぎとなるような提案もあってよいように思います。

各学年の必要な単元の授業として、統一した方向性も重要ですが、それぞれの子供たちの疑問にも答え、5,6年、中学へとその疑問を追いかけるようにさらなる社会科への興味を醸成する工夫も求められているのではないでしょうか。


<この項、了>
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