◆剪定講習3:桜並木の育成と保存管理

●桜(保存・移植計画や基本剪定と害虫駆除による育成・保存計画)

<校門前の西側通路の桜で実地講習>


<新井氏談>
<この桜並木の概観と保存・移植計画について>
この正門の桜並木は、素晴らしいですね。開花期ではないのですが、樹皮やを見るだけで、ある程度の樹種は特定できます。特にこの並木では、他には無い、八重咲きの大木、古木があるように見受けます。是非、桜という樹種自体の寿命はありますが、可能な限り、保存していってほしいですね。かなり衰えている桜もあります。本来、桜は、根が浅く、横に広がる樹種なので、この並木のようにアスファルトなどで脇道を固めると固めていない方向(南北に)に根を伸ばす傾向があります。ただ、並木が南北方向なので、日当たりが均等で、東西方向の並木より、片側だけが日当たりが悪くなることがなく、同じように育っていることが良いと思います。東西だと、北側の樹木の樹勢が弱くなり、強風などで倒木するという例も多いのが、桜並木なのです。本来、このような並木は、人間が作らない限り誕生しないのが、桜です。野生では、所々の最適な場所に生えているというのが桜という品種の傾向です。

<樹種の特定と樹木調査について>
この桜並木も樹木調査をしたそうですが、全部の株を調査したと聞いています。かなり費用がかかったでしょう。本来は、樹勢が目視でも衰えている株に限って調査をする方法が費用的にも安く、効率的にできます。学内の他の場所でも調査を予定していると聞いています。是非、そうした方法を検討してみてください。また、せっかく素晴らしい八重咲きと思える樹種もあるようなので、開花期に花を調べて、品種の詳細な特定作業行い、その情報を大学で共有して、地域の住民など、より多くの方々にこの並木の素晴らしさを伝えてほしいものです。

<樹間、移植、伐採について>
この並木は、樹間も5〜6メートル程度ですが、本来10〜12メートル程度は必要です。古い樹種を伐採したり、未熟な若い株を移植する際には、こうした点を考慮する必要があるでしょう。桜の移植は、この冬の時期が最適です。現在、大木の脇に移植されているヤマザクラの若木(小金井桜)もこのままでは、樹勢が心配です。早い段階で、どこか別な場所に移植する必要があるでしょう。大木を伐採する場合も、根を掘り上げるのは大変です。伐採する時に、ひこばえしている小さな株を残して、根を利用して、同じ樹種を育てる方法が望ましいのです。今後は、そうしたことも検討してみてください。

<今回の剪定、害虫駆除管理について>
剪定は、天狗巣病除去や更新枝を残すための古い枝の剪定を行います。
害虫駆除は、コスカシバを見つけ次第に捕殺します。(剪定を含め傷口保護材必須)


●参考:

*「本サイトの花研究」
桜の研究カテゴリーは、こちらから。

*「桜の移植、樹間などについて」

本サイトの「桜の育て方」の情報は、こちらをご覧ください。

●また、本サイト外では、Web上で見つけた桜並木管理についての情報を転載しておきます。

<参考公的サイト>
公益財団法人 日本さくらの会の公式サイトには、桜の基礎知識についての情報が掲載されています。
国立研究開発法人 森林総合研究所の公式サイトには、「桜の新しい系統保全という資料」があります。

<参考個人サイト>
このはなさくや図鑑には、各種の桜の情報と一緒に桜の管理についての情報も掲載されています。
Wampaqのおもちゃ箱(Toy Box)には、700種の桜の品種データベースの「桜nの博物館」という情報コーナーがあります。


<新井氏談>

<桜の保存管理:害虫駆除について>
剪定とともに冬の害虫駆除管理は、樹皮を丁寧に探すことから始めます。先ず、最初は、コスカシバ(Synanthedon hector)という透明の翅をもつ蛾の一種の被害を探します。この蛾の幼虫は淡黄白色の幼虫がサクラ(桃なども)の幹や枝を穿孔(せんこう)加害します。この加害した部分から、胴枯病菌が侵入して、腐朽性病害の原因になることもあります。
穿孔した幼虫は、樹皮下で越冬し、翌年3月頃再び食害した後に、樹皮下で蛹化して羽化します。この穿孔後は、寒天状のヤニと虫糞を探して発見し、切除して、幼虫を捕殺して、駆除します。その後、切除した後に殺菌塗布剤を施すのが確実なようです。ただ、この幼虫を中々、見つけにくい場合もあり、「スカシバコン」という性フェロモン攪乱剤を使用する場合もあります。この資材は、成虫の交尾(交信)を阻害して次世代の密度を低下させる資材で、針金状の製品を枝に巻きつけて使用します。ただ、直ぐに効くというものではないので、一定期間を要します。詳細は、別途資料でご紹介します。


<実際にさくらの幹にあるコスカシバの穿孔を指摘する>


●本サイトの「桜の害虫駆除」に関する情報は、こちらをご覧ください。

●Web上で見つけた情報について

○長野県林業総合センターのさくらのコスカシバ被害についての情報は、こちらをご覧ください。
○サカエグリーンのコスカシバ対策の資料は、こちらからご覧ください。

○樹木医などの教材では、その被害を予防するには、サクラ等、観賞用の樹木の場合は、5月末〜9月末まで毎月1回、比較的残効性が高いスミパイン乳剤100〜300倍液を噴霧するとされているようです。さらに休眠期には、ガットキラー・ラビキラー等のMEP乳剤を散布または塗布するように対策方法が説明されているようです。

【スカシバガ科について】<Wikipediaより、転載>

スカシバガ科(スカシバガか、学名:Sesiidae)は、主としてチョウ目(鱗翅目)に属する分類群である。本科にはスカシバ(透翅、透羽、透かし羽)と呼ばれるガが含まれる。

【形態・生態】

成虫の前翅、後翅に鱗粉がなく、透明な部分を有する種が多い。
幼虫の多くは、様々な草本植物、つる植物、樹木の茎に穿孔して、内部で成長する。

【主な種】

ヒメスカシバ亜科

ヒメセスジスカシバ Pennisetia hylaeiformis
セスジスカシバ Pennisetia fixseni

スカシバガ亜科

オキナワスカシバ Scasiba okinawana
キタスカシバ Sesia yezoensis
オオモモブトスカシバ Melittia sangaica
モモブトスカシバ Macroscelesia japona
ブドウスカシバ Nokona regalis - 幼虫は、ブドウ虫としてヤマメ・イワナ・ニジマスなどの渓流釣りの釣り餌として使われている。
ビロードスカシバ Paranthrene tabaniformis
アカオビコスカシバ Synanthedon formicaeformis
Synanthedon myopaeformis
スグリコスカシバ Synanthedon tipuliformis

スズメガ科の「スカシバ」

また、スズメガ科に属すガでも、オオスカシバなど前翅、後翅ともに鱗粉のないもので、この名で呼ぶものもある。スズメガ科の昼行性の種の多くは、ホウジャクと呼ばれるものが多く、この中に、スカシバガ科と同様に翅に透明部分を持つものも少なくないが、「スカシバ」の名をもつのは、日本産のスズメガ科では、翅がほとんど完全に鱗粉を失い透明になる、ホウジャク亜科のオオスカシバとリュウキュウオオスカシバのみである。

<転載、以上>

<この項、続く>