【習わなかった漢字学】

学校教育で習う漢字は、当用漢字、年代によっては、常用漢字です。この漢字教育の背景と文化としての「漢字学」の現在を、白川静氏の著作を主に学んでいく基礎学習のコーナーです。

まず、最初に私たちが当然のように学んできた「当用漢字と常用漢字」を知り、その後で、今の漢字文化研究の先端ともいえる白川氏の漢字研究を学びます。


参考図書:対象となる世代に応じて、教える側が解題し、その部分を使って教え、最終的には自分で1冊を読み終える環境づくりをするようにしていきます。

1)「白川静 −漢字の世界観(松岡正剛著、平凡社新書)」
2)「漢字(白川静著、岩波新書95)」
3)「文字問答(白川静著、平凡社ライブラリー)」


1)当用漢字と常用漢字とは

<Wikipediaより、転載>

当用漢字(とうようかんじ)は、1946年(昭和21年)11月5日に国語審議会が答申し、同年11月16日に内閣が告示した「当用漢字表」に掲載された1850の漢字を指す。広義には、当用漢字表(1946年〈昭和21年〉11月16日)、当用漢字別表(1948年〈昭和23年〉2月16日)、当用漢字音訓表(同)、当用漢字字体表(1949年〈昭和24年〉4月28日)および当用漢字改定音訓表(1973年〈昭和48年〉6月18日)という一連の内閣告示を総称する。
なお「当用」は「将来はわからないが、しばらくの間さしあたって用いる」の意。

1981年(昭和56年)、常用漢字表が告示されたのに伴って当用漢字表は廃止された。

【概説】

当用漢字は、さまざまな漢字のうち制定当時使用頻度の高かったものを中心に構成されており、公文書や出版物などに用いるべき範囲の漢字として告示され、その後学校教育、日本新聞協会加盟マスメディアなどを通じて普及した。複雑かつ不統一だった従来の正字体の一部に代えて、略字体を正式な字体(新字体)として採用した。

第二次世界大戦前から漢字制限主義者と表音主義者は、漢字は数が多く学習に困難であるから制限または廃止すべきであると主張し、作家・山本有三、土岐善麿らは漢字の濫用が軍国主義復活につながると主張し、実際に、文部省を中心に常用漢字表による用字制限などを試みた。しかし民間や文学者、日本語学者からの反対意見も強く、改革は行われないでいた。

戦後連合国軍最高司令官総司令部 (GHQ) の占領政策となった国語国字改革のもと、簡素化と平明さを目指して、戦時下に作成された標準漢字表内の常用漢字を基に当用漢字が策定された。従前は、答申、すなわち単なる意見具申が内閣に提出されてから十分な期間、民間の討議に付されるのが一般的であったが、当用漢字については1946年(昭和21年)11月5日に漢字表を公表後、わずか11日後の16日に内閣告示という極めて性急なものであった。

なお日本国憲法で使用される漢字はすべて当用漢字表に採用された。
告示以降、それまで使用された語句の同音の漢字による書きかえなど問題点(以下の項目を参照)が頻出し、1956年(昭和31年)に国語審議会により実態が報告された。1981年の当用漢字表の廃止以降は書き換えに強制力はなくなったが、現在においても、公文書を始めとした用字の指針となっている。

【問題点】

交ぜ書き

当用漢字以前に書かれていた熟語には「牽引」のように熟語を構成する漢字に当用漢字とそれ以外の漢字とが混在するものが多数存在した。これらの熟語は「けん引」のように当用漢字だけを漢字にしそれ以外(表外字)を仮名で書く交ぜ書きが行われることとなった。こうして一つの語の内部で字種の不統一を招いた。

ワードファミリーの断絶

中国文学者の高島俊男は、新字体の導入によって、例えば、同じ「專」が、專は専、傳・轉は伝・転、團は団となってしまい、「まるい」・「まるい運動」という共通義をもった家族(ワードファミリー)の縁が切れてしまったと指摘している。

古典および他の漢字使用国からの隔絶

当用漢字は日本独自の新字体を採用しているため、当用漢字だけの知識では古典を原典のままでは読めなくなってしまった。そこで、新字体に書き換えた古典が登場するようになったが、新字体では複数の字種を一つにまとめたので、例えば辨・辯・瓣は弁にまとめてしまったために、序文という意味(「弁」はかんむり)の「弁言」と、口達者という意味の「辯言」が新字体では「弁言」になって区別がつかなくなるという事態が発生するようになった。

当用漢字字体表告示の時点では、日本以外の漢字文化圏で、手書き文字として略字が民間で使われていたものの、公式に漢字を簡略化した国はなかった。これ以降、同じ意味の漢字であっても公式な字体や活字の字体が大きく異なるというものが出現した。中華人民共和国では1956年漢字簡化方案により簡体字が実施された。中華民国、香港では漢字の系統的・政策的な簡略化は行われず、繁体字を維持しているが、特に1980年代以降漢字の標準字体を示す際に整理が行われ、従来活字で見られたものとは異なる字体が標準とされた字も少なくない。朝鮮半島では漢字の字体の変更は行われていないが、ハングル専用政策により北朝鮮では漢字自体が全廃され、大韓民国では漢字の使用が激減した。

常用漢字(じょうようかんじ)は、日常生活において現代日本語を書き表す場合に使用する目安として日本政府より選定された漢字である。現在は2136字が選定されている。

【概説】

日本文部科学省文化審議会国語分科会の答申に基づき、「法令、公用文書、新聞、雑誌、放送など、一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安」[1]として内閣告示「常用漢字表」で示された現代日本における日本語の漢字である。
現行の常用漢字表は、2010年(平成22年)11月30日に平成22年内閣告示第2号として告示され、2136字/4388音訓[2352音・2036訓]から成る。

常用漢字表の目的は、漢字使用の目安であって制限ではない一方、日本の学習指導要領では義務教育の国語で読みを習う漢字は常用漢字しか規定がない。

日本の主な報道機関は、日本新聞協会が発行する『新聞用語集』(新聞用語懇談会編)に掲載される新聞常用漢字表に基づき、各社で多少手を加えて、漢字使用の基準としている場合が多い。各種メディアにおいても常用漢字制限からくる漢字と平仮名の「混ぜ書き」を行う慣例は、今もなお続いている。


<転載、以上>

文化審議会は、現在(2008年以降)は、文化庁の管轄となており、その国語文化会にある「漢字小委員会」で答申を出すなど、漢字について扱っています。詳細は、文化庁のこちらのコーナーをご覧ください。ただ、理解してもらいたいのは、この小委員会(平成22年で終了)は、漢字表をどのようにつくるかを答申、検討する委員会で、漢字をどのように教えるかは、文部科学省の各国語科の指導要領です。あくまで、どの漢字を教えるかという範囲を決めるに過ぎません。

つまりは、「文化として、習うことが必要というよりは、生活していくのに最低限必要とされ、義務教育の範囲で教えられた漢字の範囲を決めてきた」ということです。もちろん、高等学校、大学、社会人としての文化、国語教育は、その範囲を超えていくものであるべきであることは当然です。
ただ、そうした教育環境下でどのように漢字を習ってきたかというと専門として国語学でも学んでいない限り、実用現場で随時、様々な漢字を学んでいるものの、その文化としての成り立ちや漢字文化の影響下でどのような文化形成にいたったか、などを学ぶことは、稀というのが現状でしょう。

この項目では、白川氏の著作を核にそうした「我々の文化の基底を形成してきた漢字文化とは、何か」を学んでいきます。

昭和45年に岩波新書から、白川静氏の著作「漢字」が出版された当時、義務教育で、この本に出合うことなく、漢字を学んできた自分が、その本に30歳を過ぎてから出会うまで、漢字を学ぶのは、巷の国語、漢和辞典でしかなかったこと。
目から鱗というこの本との出会いが、自分の学んできた義務教育での漢字文化とのギャップに驚いたことをおぼえています。そして、その後、学校教育は変わっていくのかという疑問も常に感じてきました。

そして、生まれた疑問は、
「一体、今、小中学生、高校大学生はどんな形で漢字をまなんでいるのか?」
「こうした漢字文化を学んでこなかった我々のような世代は、その後、学んだのか?」
というものでした。これらの疑問がこの項目を書き出す、きっかけとなりました。

我々の世代がこうした漢字文化を学ぶものが少ないのは、ことあるごとに白川氏の編集された字書「字統(日本文化の古代研究に関わる方々)」「字訓(主に古典、古文に関わる方々に)」「字通(漢字教育や漢字に接する機会の多い編集の方々など)」のことをそれぞれ、関係するだろう方々を中心に広く聞いて知らない人間がいかに多いかを知ることで良く解りました。

それなら、今の世代は?その世代を教える教員たちは?という不安が広がってきます。

このサイトで推奨するのは、国語の教科という枠に限らず、各世代の学習で「字統(国語辞書、正確には、字源辞典として)」「字訓(古語辞書として)」「字通(漢和辞書として)」利用する機会を増やしていくという「漢字の発見」という学習環境づくりです。

さらに重要なのは、こうした「知」の形成に至った白川氏の物語をその社会背景や氏の随筆、著作などから、学ぶことです。
当然、こうした作業は、白川氏の「初期万葉論」などにつながり、古典学習へとも、万葉時代の歴史学習へとも連携してきます。


詳細は、別サイト「公界」で風土知研究で展開している「六部塾」の先人の知恵を学ぶにある「白川静」氏のカテゴリーをご覧ください。>こちらから


<この項、了>
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