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<万葉集 寄草 作者未詳 巻十 2270>

道の辺の尾花がしたの思ひ草今さらさらになど物か思はむ

この「思ひ草」がナンバンギセルではないかとされています。

歌の大意は、「道のほとり、穂を出した薄の下蔭の思い草――まるで思い悩むように俯いて咲いている。そんな風に私も恋の悩みを抱えているのだけれども、いやいや、今更もう何を悩んだりしようか。」
この歌を本歌として、以下のように数々の歌が歌われています。


『俊成卿女集』  北山三十首 恋  藤原俊成女
くれはつる尾花がもとの思ひ草はかなの野辺の露のよすがや

『新古今集』 (題しらず) 和泉式部
野辺見れば尾花がもとの思ひ草かれゆく程になりぞしにける

『金葉集』 (頓来不留) 源俊頼
思ひ草葉末にむすぶ白露のたまたまきては手にもたまらず

『新勅撰集』 (女につかはしける) 藤原隆房
人知れぬ憂き身にしげき思ひ草おもへば君ぞ種はまきける

『式子内親王集』 式子内親王
ほのかにもあはれはかけよ思ひ草下葉にまがふ露ももらさじ

『新古今集』 (題しらず) 源通具
とへかしな尾花がもとの思ひぐさしをるる野べの露はいかにと

『宝徳三年百番歌合』 (旅宿夢) 下冷泉政為
臥しわびぬ我がふるさとをおもひ草をばながもとの夢もつたへよ

『漫吟集』 (人のもとにて庭に薄あるに) 契沖
朝な朝な尾花がもとを清むれば思ひ草なき秋の庭かな

<以上>
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