<「植物ことわざ事典(足田輝一編集、東京堂出版」より転載>

ガラッパグサが咲くとカッパが渡る

鹿児島あたりでの、夏の到来をつげる季節の言葉である。
ドクダミは、各地でいろいろ方言でよばれるが、
鹿児島や宮崎の一部では、ガラッパグサと呼ばれる。

ガラッパとは、河童のことである。また、
静岡あたりでは、ギャーロッパというが、こちらはカエルのことだ。方言には、この他、
イヌノヘ(青森・秋田)
ジゴクソバ(東北・関東)
シビトグサ(大分)
ジュウヤク(各地)
ドクタメ(各地)
ドクダシ(新潟・熊本・鹿児島など)
ニュウドウグサ(各地)
ヘヒリグサ(大分)

などがある。

<転載、以上>

さらに、この本では、河童伝説として、夏に川や海にいる河童は、冬には山中に入る(南九州)という説や特に日向地方での「河童は夏になると海辺より山に向かい、初夏の雨の夜は、数百が群れをつくってヒョウヒョウと鳴きながら空を行く。これを河童が山に入るといい、秋には同じ声で海の方に行くのを、河童が出るという」説や宮崎地方での「河童は、春秋の彼岸のころ、ヒョウヒョウと鳴きながら山と川の間を往き来するから、ヒョウスベ、ヒョウスボと呼ばれる」という説も紹介している。

そして、ドクダミの咲き始める五月頃が、シギ科のキアシシギやアオアシシギ(ビ・ウィー、ビビビ、ビィーヨ、ビビビなどと鳴く鳥)の渡りの最盛期、さらには七月から九月にかけてがこれらの鳥の南方への渡りなので鹿児島地方の人々は、これを河童の渡りと聞きなしたのだろうと推論している。
(この渡りは、マレー半島やオーストラリアから、夏の繁殖地のシベリア東部やカムチャツカへのもの)