<Wikipediaより、転載>

シタン(紫檀)は、マメ科ツルサイカチ属 Dalbergiaのうち、銘木として利用される数種の木本の総称である。
古来日本に紫檀として輸入されてきた銘木は2種あり
ケランジィ Dalbergia cochinchinensis
マルバシタン Dalbergia latifolia
である。このシタンは、コクタン(黒檀)、タガヤサン(鉄刀木)と共に、唐木三大銘木とされる。

現在では、このほかにもいくつかの種がシタンとされ、最も広義のシタンは、ツルサイカチ属を含む数属に分散する。ただし「紫檀」をツルサイカチ属に限定すべき、あるいは、ツルサイカチ属とインドカリン属 Pterocarpus に限定すべきだという意見もあり、ツルサイカチ属・インドカリン属以外を「紫檀系」とする語法もある。

複数種の総称としてのシタンは学術的な用語ではないが、シタンを総称とせず特定の種の和名とすることもある。ただしその種は一定せず、
ケランジィ Dalbergia cochinchinensis
コウキ Pterocarpus santalinus
カリン Pterocarpus indicus

のいずれかとされる。

【他言語での相当語】

シタンは rosewood(ローズウッド)の訳語でもある(シタンを特定種の和名とする場合は rosewood は「紫檀類」とすることもある[9])。rosewood もシタン同様にあいまいな言葉だが、true rosewood はツルサイカチ属のいくつかの種であるとされる。

中国語では「紫檀」は、インドカリン属のいくつかの種、特にカリン Pterocarpus indicusのことである。ただし、日本の「シタン」に当たるのはこれではなく「黄檀」で、ツルサイカチ属のいくつかの種、特に Dalbergia hupeanaのことである。

【木材】

<材質>

熱帯産の堅く重い樹種で、三大唐木のひとつである。心材は重硬で緻密。気乾比重は0.82–1.09。従って水に沈むものもある。
赤みを帯びた木肌で、赤褐色〜黒色の縞模様があり、色調はかなり変化に富んでいる。木理は交錯し、肌目もやや粗〜粗。
重硬なため、乾燥・加工性にやや難があるが、美しい仕上がりが得られる。虫や菌に侵されにくく、耐朽性は極めて優れている。
材にかすかなバラの芳香がするものが多く、ローズウッドと呼ばれる[1]。加工過程では、粉塵が出るためその芳香はよりはっきりと感じられる。

【用途】

その木材は銘木として古くからよく知られ、古くから工芸材料として利用されている。また、正倉院宝物の唐木細工でも多く見られる。家具、仏壇、仏具、床柱、床框、装飾、楽器、ブラシの柄などに使われ、特にエレキギターの指板材としては最も人気がある。

【主な種】

シタン・紫檀とされることのある種は以下のとおりである。

<ツルサイカチ属>

ツルサイカチ属 Dalbergia には150〜200種が属すが、その大半はつる性の草本であり、銘木級の用材を産するのは20〜30種である[1]。
中でも、ケランジィ、マルバシタンのうちインドローズ、ココボロは、希少で市場価値が高く、特に「本紫檀」と総称される。

ケランジィ(パイオン、タイローズウッド、Siam rosewood) Dalbergia cochinchinensis Pierre
タイ、インドシナ産。シタンの代表種で、本紫檀の1種。心材は比重1を超えきわめて緻密。タイではパユン (phayung)、ラオスではカムフン、ベトナムではチャック (trắc、トラックは英語風発音) と呼ばれる。

マルバシタン Dalbergia latifolia Roxb.
インド、ジャワ産。材質はケランジィと同様だが、黒色の縞がある。インドで自生するものはインドローズ (Indian rosewood) と呼ばれ本紫檀に含まれるが、インドネシアに植林されたものはソノケリン (sonokeling、本来の読みはソノクリン) と呼ばれ市場価値は低い。なお、同属のシッソノキ Dalbergia sissoo も Indian rosewood と呼ばれ(区別のために本種を East Indian rosewood とも呼ぶ)、シタンの語源であるシーシャム sheesham の別名もあるが、日本でシタンとされるのは本種のほうである。

ココボロ(ココボロノキ、cocobolo、Nicaragua rosewood) Dalbergia retusa Hemsl.
中央アメリカ・南アメリカ産。本紫檀の1種。テーブルナイフやスプーンの柄に使われる。

テチガイシタン(手違紫檀、縞紫檀、チンチャン) Dalbergia oliveri
インドシナ半島産。ビルマローズウッド (Burmese Rosewood)、ラオスローズウッド (Laos Rosewood)、アジアローズウッド (Asian Rosewood) とも呼ばれ、タイではチンチャン (ching chan)、ミャンマーではタマラン (tamalan)、ラオスではカンピ (kham phii) と呼ばれる。

ホンジュラスローズ Dalbergia stevensonii
中米産。

<インドカリン属>

シタンと呼ばれる種がいくつかあるが、シタンをツルカイサチ属に限定する場合は除外される。系統的には、ツルカイサチ属に(同連であるという以上には)特に近縁ではない。
シタン属とも呼ばれるが、誤りとする主張もある。

コウキ(コウキシタン、レッドサンダルウッド、red sanders、red sandalwood) Pterocarpus santalinus
インド南部産。和名「シタン」が当てられる種の1つであるが、それは誤りだとする主張もある。一方で、(シタンをツルサイカチ属とする資料でも)広義のシタンに含められることがある。三味線の棹などに使われる。

カリン(インドシタン、ヤエヤマシタン) Pterocarpus indicus
インド・東南アジア産。台湾や沖縄県にも産す。

オオミカリン(カリン、本カリン) Pterocarpus macrocarpus
東南アジア産。インドカリン属 Pterocarpus。ツルサイカチ属以外では例外的に、仏壇に紫檀と表示することが認められている(資料では「カリン」とされているが本種のことである。カリン Pterocarpus indicus は同属別種だが、もともとカリンは本種も含んでいた)。

<その他の属(紫檀系)>

この4種は紫檀の代用材としてよく使われ、紫檀として流通することもあったが、2012年以降の日本の仏壇用途では、「紫檀」とは表示できず「紫檀系」等となる。

ツルサイカチ属に近縁なものから順に並べる。

ボリビアンローズ(パープル、パープルウッド、モラド、サントスローズ、Santos rosewood)Machaerium scleroxylon
中米産。マカエリウム属オブロンガ節 Machaerium sect. Oblonga。ツルカイサチ属に最も近縁な数属の1つである(姉妹群に含まれる)。

グラナディロ(グラナディーロ、トレボル、trebol) Platymiscium pinnatum
メキシコ産。プラティミスキウム属 Platymiscium。インドカリン属にやや近縁。

パオロッサ(パーロッサ、パオローズ、アフリカ紫檀、snake bean、paorosa、paorose) Bobgunnia madagascariensis
アフリカ産。かつてはマメ亜科イチベンバナ連 Swartzieae イチベンバナ属 Swartzia だったが、1997年に同じ連のボブグンニア属 Bobgunnia に移された。

ブビンガ(bubinga)の1種 Guibourtia pellegriniana
アフリカ産。ジャケツイバラ亜科デタリウム連 Detarieae ブビンガ属 Guibourtia。「ブビンガ」は3種の総称だが、紫檀系とされるブビンガは本種のことである。

【市場価値】

シタン各種の市場価値
AAAA
コウキ Pterocarpus santalinus
AAA
ケランジィ(パイオン) Dalbergia cochinchinensis
ココボロ Dalbergia retusa
AA
インドローズ (マルバシタン Dalbergia latifolia のインド産天然材)
A
ホンジュラスローズ Dalbergia stevensonii
テチガイシタン(チンチャン) Dalbergia oliveri
ボリビアンローズ(モラド) Machaerium scleroxykon
オオミカリン(カリン) Pterocarpus macarocarpus
B
ソノケリン (マルバシタン Dalbergia latifolia のインドネシア産植林材)
ブビンガ Guibourtia pellegriniana
パオロッサ Bobgunnia madagasearensis
グラナディロ Platymiscium pinnatum
C シタンに該当種なし
AAA・AAの3種(正確には2種と1種の一部)は、「本紫檀」にあたる。
カリン Pterocarpus indicus はこの表にない。

<転載、以上>
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