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環境庁が指定した植物で以下にその概要を環境庁の公式サイトより、転載して、ご紹介いたします。

<転載部分>

国立・国定公園特別地域内指定植物

指定植物の概要

 国立公園、国定公園などの自然公園は、すぐれた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図り、もって国民の保健、休養および教化に資することを目的として指定されている。

 このように、国立公園又は国定公園などの自然公園については、保護と利用の2つの側面があるが、国立公園又は国定公園の風致を保護するため、その区域内に特別地域が指定され、当該地域内においては、風致を維持するうえで支障を生じる可能性のある一定の行為が許可等の規制に係らしめられている。この規制を受ける行為は、自然公園法第20条第3項に列挙されており、その第11号に「高山植物その他の植物で環境大臣が指定するものを採取し、又は損傷すること。」が掲げられている。すなわち、高山植物その他これに類する植物のうち環境大臣が当該国立公園又は国定公園の風致の重要な構成要素になっていること等の観点から指定したものについては、これを採取又は損傷する場合には、国立公園にあっては環境大臣の、国定公園にあっては都道府県知事のそれぞれ許可を要することとされている。

 なお、環境省では、国立公園特別地域内において指定植物の採取又は損傷許可申請がなされた際は、自然公園法施行規則第11条第24項の、第1号「学術研究その他公益上必要であり、かつ、申請に係る場所以外の場所においてはその目的を達成することができないと認められるものであること。」第2号「採取し若しくは損傷しようとする植物が申請に係る特別地域において絶滅のおそれがないものであること。ただし、当該植物の保護増殖を目的とし、かつ、当該特別地域における当該植物の保存に資する場合は、この限りでない。」をともに満たす場合にのみ許可することとしており、国定公園の特別地域においても同様に取り扱われている。

指定植物の選定範囲

 指定植物としては、原則としてシダ植物門以上の高等植物であって草本及び潅木(主幹がないものまたは主幹が匍匐している木本をいう。)を指定範囲とした。
 ただし、蘚苔類及び低木以上の植物であっても学術上または風致の維持上極めて重要であり、かつ、採取により絶滅のおそれのある種については、これに加えることとしたため、例えば、ミズゴケ属、ヒカリゴケ、マリモ、ミネザクラ、ヘゴ等も指定対象とされている。

<北海道編>
利尻礼文サロベツ国立公園、知床国立公園、阿寒国立公園、釧路湿原国立公園、大雪山国立公園、支笏洞爺国立公園 他地域内の国定公園
<東北編>
十和田八幡平国立公園、磐梯朝日国立公園、日光国立公園 他地域内の国定公園
尾瀬国立公園
三陸復興国立公園
<南関東・東海・北近畿編>
富士箱根伊豆国立公園、伊勢志摩国立公園 他地域内の国定公園
<関東・中部(山岳)編>
上信越高原国立公園、秩父多摩甲斐国立公園、中部山岳国立公園、南アルプス国立公園、白山国立公園 他地域内の国定公園
<中国・北四国編>
瀬戸内海国立公園、大山隠岐国立公園、山陰海岸国立公園 他地域内の国定公園
<南近畿・南四国・九州編>
吉野熊野国立公園、足摺宇和海国立公園、阿蘇くじゅう国立公園、雲仙天草国立公園、他地域内の国定公園
霧島錦江湾国立公園、屋久島国立公園
西海国立公園
<亜熱帯編>
小笠原国立公園、西表石垣国立公園 他地域内の国定公園
慶良間諸島国立公園

指定植物の選定理由(略号)
 指定植物の指定要件は、鑑賞用、園芸用、薬草用等として採取され易く、規制を行わなければ絶滅する恐れのある植物であることとした。

 指定植物は、この要件を満たしていることを前提として、さらに指定植物一覧表及び解説文に記載されている指定理由(略号で記載している。)の要件を満たしている。


略号の理由は以下のとおり。

 [1]分布の特殊性を有する種
固有種(分布の範囲が数地点に限定されている植物)隔離種
準固有種(分布の範囲が地域的に限定されている植物)
分布限界種(当該国立公園、国定公園が日本における分布の東西南北の限界(もしくはそれに近い地域)となっている植物)
 [2]希少種(地域的に特に個体数が少ない植物)
 [3]当該公園をタイプロカリティー(原標本の生育地)とする種
 [4]他の生物と共存関係にある種
貴重な動物(高山蝶等)の生息域にあって、当該動物と密接な種間関係(食草等)にある植物
食虫植物
腐生植物(林床に堆積した未分解の粗腐食上に限って生育する。)
着生(樹上)植物(亜熱帯ラン、常緑シダ等姿態が美しい。)
 [5]極端な生育立地条件地に生育する種
火山(崩壊斜面、溶岩地等に立地し、移動砂礫、勾配、噴出ガスなどの複合された自然環境に耐えて生育する。)
岩壁、岩隙地(岩隙に堆積したわずかな土壌と上方から流下する雨水にふくまれる養分等によりかろうじて生育する。)
特殊岩石地(石灰岩、超塩基性岩地(蛇紋岩地)に生育する植物で、土壌層の発達が悪く、母岩の含有成分による特殊条件により、他の植物の侵入がはばまれ遺存種が多い。)
崩壊性砂礫地(高山帯の雪崩斜面、海岸の風衝地等の風化した不安定な岩屑地に生育する。)
多雪地、雪崩斜面(雪崩圧による抵抗力のある高茎の草本は美しい花をつけるものが多く、7、8月のわずかな期間にいっせいに開花し、単調な亜高山帯に色どりを添える。)
海岸段丘、砂丘(海からの強い風衝作用、紫外線を受けるため、発達した根群とクチクラ層で覆われた肥厚した茎葉を備えた耐塩、耐乾構造を持つ特殊な植物のみが生育する。)
風衝地(風衝地は植物の蒸散作用に著しい影響を与え、矮性低木(潅木)群落が発達し、極端な風衝作用地は風衝草原となる。)
風穴(通年洞内からの冷気が流出し、高山性の植物が生育する。)
雪田周辺(多量の雪が夏季遅くまで残る雪田地帯では、矮性低木(潅木)群落から雪田底のコケ植物群落までのいくつかの植物群落が帯状に配列する。)
高層湿原、中間湿原(常に水によって飽和され、酸素の供給が少ないため、樹木は侵入できず、ごく限られた草本群落による湿原群落が形成される。立地は排水不良で周辺部からの無機栄養分の少ない、強酸性の特性を持つ。)
地塘、流水縁(地塘は亜高山の多雪地に発達し、高層及び中間湿原から浸出した水質は、有機質を多く含むが、酸性で低温なため貧養である。ここには貧養立地性の浮葉植物が生育する。一方、湿原の中を流れる川の水辺では、酸素含量の多い水と無機栄養に恵まれ、周辺の植生とは全く異なる植生が発達する。)
塩沼地(泥湿地において、定期的な海水の干満を受ける場所に生育する植物は、海水の浸漬に耐えられる少数の塩生植物に限られる。)
 [6]景観構成に主要な種(特に、きれいな花が群落として一斉に開花し、春、夏、秋の季観を構成する植物)
 [7]鑑賞用種及び園芸業者、薬種業者、マニア採取種(専門化による採取の対象となる商品的価値の極めて高い植物)
指定植物名の選定にあたって使用した図鑑等
 植物名は、原則として奥山春季著「採取検索 日本植物ハンドブック」の和名を採用した。


副本として、宮脇昭、奥田重俊編集「日本植生便覧」を使用し、これに基づき「日本植物ハンドブック」記載の科名の一部を次のとおり変更している。

[1]ヤマシャクヤク、ベニバナヤマシャクヤクはボタン科をキンポウゲ科に変更し、指定順はキンポウゲ科の最後とした。
[2]ヤッコソウはラフレシア科をヤッコソウ科に変更した。
[3]シバナ、ホソバノシバナはシバナ科をホロムイソウ科に変更し、指定順はホロムイソウ科の最後とした。

 また、「日本植物ハンドブック」に記載されていない植物については、上記「日本植生便覧」のほか大井次三郎著、中池敏之増補「日本植物誌(顕花篇、シダ篇)」、田川基二著「日本羊歯植物図鑑」及び初島住彦著「琉球植物誌」他により補完した。

 指定植物の科名順は、「日本植物ハンドブック」の科名順にならい、科の中の種の順序は学名のアルファベット順としている。
 なお、次の「指定植物一覧表」における植物名で、(……)は異名を表わし、(……を含む。)は、亜種、変種として異なる植物であるが、一般者には差が認められないため、一括指定したことを表す。

<転載、以上>

実際の一覧表は、本サイトのダウンロードコーナーでご覧いただけます。
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