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【雑草とは】

この章では、様々な方々の雑草についての概念をご紹介します。

●1:定義例

「きらわれものの草の話」で松中氏は、二人の権威が定義した「雑草」について、説明しています。

その1は、元農林省の農学者、故荒井正雄博士(1951年)の定義で、
農業という人間の経済行為の側に立って「農耕地で人間の営んでいる経済行為に相反して、直接または間接に作物を害して生産を減少させ、農耕地の経済価値を低下させる作物以外の草本(ササや小低木が含まれることもある)」とするものです。

その2は、イギリスの植物生態学者J.L.ハーパー(1944年)の定義です。
「攪乱された土地に自然に生えてくる植物」を意味する雑草です。この場合の攪乱された土地とは、「土砂くずれや噴火などで裸地となった場」と「人間の活動によって、耕されたり、整備されたりした土地」を意味しているようです。

そして、自分のもう一つの定義として、
一般の人々が「漠然と“雑草”と考えている植物」という身近な草全体を指す場合も定義に含めたいと述べています。

作物・雑草・人里植物・山野草の違い

さらに京都大学で雑草学を教えている伊藤操子教授の『雑草学総論』(養賢堂、1993年)でこの雑草と作物・野草との相違を
「野草、雑草、栽培植物の間の生態的な境界ははっきりしない。しかし、一般的にいうと、野草は、人間の攪乱の外側で、雑草はその内側で自然に生育する植物群であり、栽培植物は人間の手助けがなければ繁殖しない植物群である」と述べていることを語っています。

また、岡山大学で雑草学を講義、研究してこられた笠原安夫教授のこの定義をまとめた以下の図(図は本サイトで書き直しています)もこの本では、紹介しています。

山野草・人里植物・帰化植物・作物と雑草の生育地と日本での種類(笠原安夫、1971年)


5●参考文献一覧:
「きらわれものの草の話」(松中昭一著、岩波ジュニア新書)

【日本雑草学会をご存知ですか?】

実は、日本雑草学会という学会があります。その会の目的と歩み、主な活動を知るといかに雑草が人間の文化の中で扱われているかが、見えてきます。以下に同学会の公式サイトから、その内容を転載して、ご紹介します。

日本雑草学会の目的

雑草は、農耕地、芝生地、生活環境など、あらゆる場所に発生し、その制御がしばしば問題となります。他方、雑草は、劣悪環境の修復など、環境保全にも役立ちうる可能性を持っています。本学会では雑草研究の基礎から応用面で活躍している人々がメンバーとなり、研究発表や情報交換を通して会員相互の向上・発展と農業生産や環境保全へ寄与することを目的としています。

日本雑草学会の歩み

作物生産の場面では、病害、虫害、雑草害など様々な減収要因があります。古来、そのような減収要因を取り除くため多くの創意工夫がなされてきましたが、中でも雑草の制御は,人力によって取り除く以外すべが無く、極めて過酷な労働を農業従事者に科してきました。
さらに、昭和30年代以降の工業の振興により、農村労働力の著しい流出・減少が起こったため、雑草制御の軽労化、省力化が強く要望されていました。

こうした背景から、合理的な雑草制御技術の確立のため、様々な専門分野の研究者が集まり昭和37年1月16日に『日本雑草防除研究会』が設立されました。
その後、昭和50年4月23日に『日本雑草学会』に組織変更、同時に日本農学会の加入学会となり、現在に至っています。この間、昭和52年には、国際雑草学会にも加盟しました。

日本雑草学会は、農学の専門分野として『雑草学』を確立するとともに、総合的雑草研究の発表・交流・討議の場として、その役割を果たしてきました。


<転載、以上>

また、学会の進めている研究活動を知るには、公式サイトをご覧いただくのが良いでしょう。

各研究会の活動
公式サイトにあるこちらのページをご覧ください。

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