【植物の生活型とは】

参考文献:「植物の生活型の話 雑草のくらし・野外観察入門(岩瀬徹著)」より参照し、情報や模式図などを以下に転載します。

【植物分類としての一方式としての“生活型”の登場】

本来の植物の分類方式は、良く聞く、「キク科」「バラ科」などという分類を聞いたことがあると思います。この分類は、主に花のでき方や構造から分類する「系統分類」という方式です。ただ、学術的な分類でもあり、中々一般的な植物を身近で目にして、この分類を理解するのは難しいところがあります。

実際の植物の全体像や生育の仕方、種や実で、またはその他の方法で子孫を残す仕方などから、区分する分類の方が解りやすいと考え出された分類方法が、「生活型」という分類方法です。
ある意味では、植物のくらし方の違いからの分類方法です。

考え出した学者の名前から、「ラウンケア」、「沼田」、「クリンカ」の生活型などと呼ばれる、幾つか分類方法があります。

この章では、雑草の生活型から、理解する目的で、その中の2つ、ラウンケアの生活型と沼田ーギリンガムの生活型を取り上げて、ご紹介します。


【ラウンケアの生活型ー休眠型を学ぶ】

<生活型区分における休眠型とは>

このデーンマークの植物学者ラウンケアの提唱した分類は、休眠芽(生活不敵期をじっとしのいでいる芽)の位置に基づく生活型です。そのためこの生活型を休眠型と呼んでいます。区分は、五つで、
地上植物、地表植物、半地下植物、地中植物、一年生植物、水湿生植物です。

<休眠型模式図>








地上植物(Ph Phanerophytes)

休眠芽の位置が地上から30cm以上のもの
これをさらに低木(N Nanophanerophytes)、小高木(M Mesophanerophytes)、大高木(MM Megaphanerophytes)などに分けます。木に着生する植物もこれに入れます。

地表植物(Ch Chamaephytes)

地表から30cmまでの位置に休眠芽があるもの。これには、小低木や多年草の一部が入ります。

半地中植物(H Hemicryptophytes)

休眠芽の位置が地表面かすぐ下にあるものとします。多年草の一部が入ります。

地中植物(G Geophytes)
休眠芽の位置が地表面より離れた地下にあるものとします。多年草の一部が入ります。

一年生植物(Th Therophytes)

一年のある期間を種子だけで過ごすものとします。
夏型一年草(冬を種子だけで過ごす)と冬型一年草(夏を種子だけで過ごす=越年生植物)とがあります。二年草もここに入ります。

水湿生植物(HH Helophytes)

休眠芽が水中あるいは湿地の地中にあるものです。一年生と多年生を含みます。


この休眠型だけでは十分に植物のくらしを分類できません。そこでさらに生育、繁殖という活動に着目して、登場した分類が沼田ーギリンガムの生活型です。

【沼田眞博士の提唱した生育型と繁殖型という生活型を学ぶ】

<生育型(growth form)とは>

生育型は、主に草本の地上部分の生育形態を類型化したもので、それ以前にチャールズ・ギンガム氏が提唱した方式を沼田博士が改訂して、作り上げたものです。以下の図とその分類名をご覧ください。

<生育型模型図>


<項目記号と生育の仕方の分類説明>

直立型(e)Erect form
主軸(茎など)がはっきりとした直立性のもの

ロゼット型(r)Rosette form
葉は根生葉だけで花茎に葉を付けないもの


●ロゼットについての解説は、こちらからから。その見分け方についての資料や写真は、こちらをご覧ください。

●根生葉もこのロゼットを含む、特殊な葉の形態で、詳細は、こちらでご覧ください。

一時ロゼット型(pr)Partical-rosette form
ある期間ロゼットで過ごし、後に茎が直立するもの

偽ロゼット型(ps)Pseudo-rosette form
ある期間ロゼットで過ごし、後に根生葉を残して茎が直立するもの


●Pseudo:スドウと発音します。形容詞で、
偽りの、にせの、まがいの、見せかけの、偽善的なという意味に使います。

分枝型(b)Branched form
茎が下部から多くに枝分かれし、主軸がはっきりしないもの

ほふく型(p)Procumbent form
茎が地表を這い、節々から根を下ろすもの

叢生(そうせい)型(t)Tussock form
根元から多くの茎が叢生するもの

つる型(l)Climbing or liane form
茎がつるになり、巻きついたり、寄りかかったりするもの


さらに沼田の生活型には、植物の種の維持のために繁殖する方法が様々あります。その方法を「繁殖型」として、分類しています。
大きく二つ、種子を作って散布するという「散布器官型」と茎や根を伸ばして、芽をつくり新しい個体をつくる「地下器官型」です。とい以下にその分類をご紹介します。

<繁殖型ー散布器官型とは>

以下のようにD1からD5までの5つに分類しています。






D1

散布要因:風・水
散布の仕掛け:
冠毛や絹毛、翼、袋状の被膜などをもつ
あるいは、微小
水に浮く

D2

散布要因:動物・人
散布の仕掛け:
針やかぎ毛をもつ
粘液を出す
果皮が液質で食べられる
動物の貯食行動などによって運ばれる

D3

散布要因:機械的な力
散布の仕掛け:
乾湿や膨圧により果皮が裂開する

D4

散布要因:重力
散布の仕掛け:
自然の落下
種子をつくらない(栄養繁殖による)


こうした分類も正確に区分できるわけではないようです。どちらかを判断できないような場合、2つの方法をとる植物とみられる場合などがあるからです。その意味では、あくまで便宜上、分類という必要性からの区分です。自然界は割り切れないことの方が多いのが実際でしょう。

<繁殖型ー地下器官型(R型)とは>

地下茎などや根の張り方は、その土地の環境条件に大きく左右されます。そのことから、根や地下茎の類型が生まれました。

地上では、別々に見える個体が地下では、地下茎などで繋がっている場合に連絡体をもつと表現します。この地上部の長さを(d)、その株の地下部の長さを(l)として、定量的な目安をつくり、連絡体の拡がりの程度で区分する分類方法です。以下の模式図では、連絡体大きく5つの類型に区分しています。



R1
最も広範囲に連絡体をもつ(d>100l)

R2
やや広範囲に連絡体をもつ(100l>d>10l)

R3
母株近くに連絡体をもつ(d>10l)

R4
ほふく茎や不定根などによって連絡体をつくる

R5
単立し連絡体をもたない


ここでもある個体をR3と見るか、R5と見るか、難しい例があります。実際の観察でもこうした難しさに直面します。

<以上>