「桔梗」は古く中国でその根の薬効で知られていることから、その中国の漢字の読みから、「キキョウ、キチカウ」とされたようだ。

このサイトでは、医学関連の資料に詳しい和名の解説があるので、以下に紹介します。

この資料は、北里研究所東洋医学総合研究所の真柳 誠教授が2001年に「漢方医学」に掲載された「漢方一話 処方名のいわれ128 桔梗湯」(『漢方医学』29巻1号40頁)です。

<転載部分>

(前段部分略)

和名のキキョウは漢名・桔梗の音読に由来する。桔梗は1世紀頃の『神農本草経』中品に載るのが伝世医書での初出だが、出土書では前2世紀を遡る馬王堆医書の『五十二病方』等に配剤方がある。また『荘子』『山海経』『戦国策』など紀元前に遡る古典にも記載があり、相当に古くから桔梗の名で呼ばれていた。

この名の由来を清代の考証学者・王念孫(1744〜1832)はこういう。
『説文解字』に「桔、直木也」、『爾雅』に「梗、直也」とある。すると桔梗の名は直という意味によるのだろうか、

と。

森立之(1807〜1885)は『本草経攷注』で当説に賛同し、さらに古くは梗の一字だったといい、根拠として3〜5世紀の『名医別録』に記される別名の梗草を挙げる。そして梗→結梗→桔梗のように変遷したのだろう、という。
立之は、桔梗の和名も考証する。平安時代898〜901年の『新撰字鏡』は万葉仮名で、岡止止岐(ヲカトトキ)・加良久波(カラクハ)・阿佐加保(アサカホ)などの和名を記す。
918年頃の『本草和名』と984年の『医心方』には、乎加止止岐(ヲカトトキ)・阿利乃比布岐(アリノヒフキ)が載り、いずれの和語にも語源が推定される。一方、976〜987年の『古今和歌六帖』には、岐知加宇(キチカウ)。1128年頃の『散木奇歌集』には、岐京(キキャウ)が記され、その頃から漢名の音読で呼ばれたらしい。

まことに興味深い見解である。

<転載、以上>

また、上記の「トトキ」については、
週刊朝日百科の「世界の植物 7 キキョウ」で北村四郎氏が以下のように解説している。

<転載、部分>

また、オカトトキとは、丘にあるトトキということだろう。トトキとはツリガネニンジンのことだが、もとは韓国語だと考えられる。韓国では、キキョウは、トラジ(トラチ)とか、トラとかいうが、同じキキョウ科のニオイシャジンは、チャムトトクといい、ツルニンジンは、トトクと呼ぶ。
これらの植物は食用になるが、その食べ方を韓国からきた人に教わったので、日本でもニオイシャジンに近いツリガネニンジンをトトキというのだろう。
長野県に「山でうまいものはオケラにトトキ」という里謡(りよう)がある。
キキョウの根はイヌリンを含み、澱粉はない。有毒のサポニンがあるので、細かく裂き、茹でた後水にさらしてサポニンを除き、揚げ物や塩もみ、煮物、漬物などにする。また、若芽をゆでて、水に浸し、和え物や油いためにして食べる。朝鮮半島にはキキョウが豊富に野生し、春から夏に根を掘って好んで食べられる。

<転載、以上>

韓国にとっての白桔梗(ペクトラジ)は特別な花のようだ。
このトラジにまつわる伝説は、別な章でご紹介します。

是非、韓国でのトトキ、トラジを取材する機会があれば、食用はもちろんだが、花という面でも調べてみたいと思います。