野生種には、分布域の広い主要品種としての六種があります。
1)山桜(ヤマザクラ群)
2)大山桜(ヤマザクラ群)
3)霞桜(ヤマザクラ群)
4)江戸彼岸(ヒガンザクラ群)
5)丁子桜(チョウジザクラ群)
6)深山桜(ミヤマザクラ群)
の6種です。
また、マメザクラ群の【高根桜】をこれに加えて、7種として、合計9種としている場合もありましたが、現在では、6種に落ち着いているようです。

この他に、分布域が狭く、限られた地域の野生種として見られる二種が、
7)大島桜(ヤマザクラ群)
8)豆桜(マメザクラ群)
があります。
分布の広い野生種六種の中でも特に広い分布域をもっているのが、「大山桜」「霞桜」「山桜」の3種で、日本を北から南へとその分布域をつなげています。

最も北に分布するのが、
【大山桜】(学名:Prunus sargentii)
で別名、「紅山桜」「蝦夷山桜」とも呼ばれます。
分布域は、北海道の全域、本州は、東北、北陸、中部以北(一部、山陰や紀伊半島の山岳部にも見られます)の地域です。国外では、サハリンや朝鮮半島にも自生しています。山桜より、幾分紅色の花を咲かせます。後で紹介するヤマザクラに比べて、花や葉が大きいことから命名されたようです。開花期は、4月中旬頃。

その次に位置するのが、
【霞桜】(学名:Prunus verecunda)
です。
分布域は、九州を除く日本の山地に自生しています。海外では、朝鮮半島や中国の東北部にも見ることができます。
主な育成地は関東山岳部で、山桜が4月上旬とすると幾分遅咲きで、4月下旬頃に開花します。ヤマザクラにくらべ葉柄や小花柄に毛があるため毛山桜とも呼ばれています。花の満開になると、遠くから見ると霞がかかったように見えることからこの名前が付いたといわれています。

最も南に咲くのが
【山桜】(学名:Prunus jamasakura)
で、分布域は、本州では、宮城県以西。より南の四国、九州に自生しています。韓国でも暖かい済州島には自生しているようです。大山桜より、淡い紅色、ピンクの花をつけます。開花期は、3〜4月頃です。
ヤマザクラは同一地域の個体群内でも個体変異が多く、開花時期、花つき、葉と花の開く時期、花の色の濃淡と新芽の色、樹の形など様々な変異があります。そのため、同じ場所に育つ個体でも一週間程度の開花時期のずれがあり、ソメイヨシノと異なり、短期間の開花時期に集中しないので花見も長く楽しめたようです。寿命もながく、大木になるものが多いのもこのヤマザクラです。

この3種以外では、分布域は狭くなりますが、【丁子桜】は、早咲きで本州と四国。【深山桜】は、5月と遅咲きで、北海道から、九州までに分布域が点在する桜です。【江戸彼岸】は、関東から九州に点在します。自生種の分布は、こちらのレッドデータをご覧ください。

これ以外に最も分布域が狭く、限られている2種があります。
【大島桜】(伊豆七島、伊豆半島と房総半島のみ)
【豆桜】(富士山を中心に千葉、神奈川と静岡のみ)
がその2種類の野生種です。もちろん、これらの亜種で別なエリアに分布する品種もありますが、主なものは、この狭いエリアに限って自生しています。

<この項、了>
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日本の野生種のサクラについて