<やさしいエンゲイより、転載>
■栽培カレンダー
季節・日常の手入れ
日本種春咲きエビネは野生ランの中では比較的育てやすい部類に入ります。種によって耐寒・耐暑性などが多少異なりますが、基本的には柔らかい日射しで風通しの良い場所を好み、夏の蒸し暑さや多湿、強い寒さを嫌います。性質を理解して「季節ごとにあった置き場所」を選び工夫することが大きなポイントとなります。
開花時期に強い光が1方向から当たると花茎が光の強い方へ曲がってしまうので、鉢をときどき180℃回転させてまんべんなく光が当たるようにするか、直接日の射し込まない明るい日陰に移動させます。
日当たり・置き場所
主にスギ林の下など柔らかい日が差し込む樹林下に自生し直射日光を嫌います。強い直射日光に当たると葉焼けをおこして葉が黄色っぽくなったり一部枯れて弱ります。
一年を通して半日陰の場所で育てますが、あまり暗い日陰だと花付きが悪くなるので注意が必要です。具体的には1日あたり朝日が3時間くらい当たれば生長に問題ありませんので、それを目安に場所を選んでください。例えば、北側の庭でも間接光で必要な日光が充分まかなえる場所は日当たりの良い南向きの庭よりエビネに関してはむしろ栽培に適しているといえます。寒冷紗を用いる場合は冬30%、春・秋40%、夏60-70%を目安に遮光を行います。
蒸し暑いのが苦手で夏は根の動きが鈍り全体の生育も弱るいわば「夏バテ」状態になることがあります。真夏はできるだけ暑さを避けた風通しの良い場所を選び、夕方以降に葉や周りに打ち水をするなど、できるだけ涼しい環境をつくります。サルメンエビネのように特に暑さに弱くて冷涼な環境を好み、夏にがくんと生育が衰えるものもありますので注意が必要です。
寒さには比較的強いですが、霜に当たると霜焼けで葉が黒く枯れてしまうので気をつけましょう。ニオイエビネを初めとする暖地性のエビネは寒さに弱く最低5〜6℃必要です。
水やり・肥料
おかしな言い方ですが「エビネの体はほとんど水でできている」と表現しても差し支えないくらい乾燥に弱い植物なので、水切れは禁物です。土の表面が乾きかけたらたっぷりと水を与えるようにします。ただし、常に用土が水に浸っているような状態では根腐れを起こしてしまう気をつけましょう。年々株が小さくなり充分生育できないのは肥料不足よりも水のやり過ぎによる軽い根腐れを起こしているケースがよくあります。水切れに弱いけども、水のやり過ぎも良くないですが適した土を用いて「土の表面が乾いてきたらたっぷり与える」を守れば大丈夫です。冬は休眠しているので、水やりの回数は控えめにします。
肥料は花後から秋まで液体肥料を月2回程度与えますが、真夏は暑さで根の動きが弱ることもあるので一旦ストップします。
用土
水はけのよい土が適しています。日向土(ぼら土)小粒4:赤玉土の小粒4:腐葉土2の割合で混ぜた土を用います。
植え替え・植え付け
植え替えの適期は新しい根が元気に伸び始める花後すぐの5月頃か9月中旬-10月上旬が適期です。鉢がいっぱいになって新芽の伸びるスペースがなくなりそれ以上生育できなくなったり、同じ用土で長い期間育てていると根腐れを起こすので1〜2年に1回は新しい用土で植え替えが必要です。
植え付け鉢から抜いた株は用土を軽く落として根をほぐし、根を水に浸して揺すり洗います。触ってみてスカスカになっている根や傷んで黒ずんだ根は切り落として整理します。鉢の底に大粒の日向土や軽石を1/4くらいの高さの位置まで入れ、新芽が鉢の中心になるように新しい用土で植え付けます。植え付ける深さはバルブ(葉の付け根にある丸く太った根茎部分)が半分くらい地表に見えるくらいが適当です。
エビネは新芽が伸びてその基部にバルブができます。そのバルブからさらに新芽が出てきて…という風に年々新芽の出る位置が横方向にずれていきます。ですから現在の新芽が鉢の中心にくるように植え付け翌年、翌々年と新芽の出るスペースを広く空けておくのです。
ふやし方
株分けでふやすことができます。株分けの作業は植え替え時、新芽に古いバルブ(バックバルブ)を2〜3個付けた状態で切り分けて一株とします。切り分ける際、位置をしっかり確認して元気な根まで切り落とさないように注意しましょう。あとは植え替えの要領と同じです。また、葉の付いていないバックバルブも2-3コずつに切り分けて湿らせた水ゴケに半分埋めておくと芽が出てきます。これをバックバルブふかしと言います。
かかりやすい病害虫
病気・害虫:ウイルス性の病気、ナメクジ、アブラムシ
エビネでもっとも恐ろしく、発生する確率が高いのがウイルス性の病気です。この病気にかかると葉や新芽に濃淡のあるまだら模様が出て、株の生育が弱り、花もちゃんと咲かなくなります。一旦かかると回復の見込みは少なく、健康な株に感染することもあるのでウイルス病と判断した株は処分するか隔離します。ウイルス性の病気はアブラムシや消毒が不十分なはさみなどを通してかかることが多いので、普段から害虫の駆除や器具の消毒などを行い感染ルートを断つよう努めます。
ナメクジは新芽や花を食害しますので見つけしだい駆除するか、誘殺剤などの薬剤を用います。
まとめ
水切れに弱いので、土の表面が乾きかけたら水をたっぷり
真夏の高温多湿を避け、風通しの良い場所で育てる
一年を通して、適した環境になるよう置き場所を工夫する
<転載、以上>
■栽培カレンダー
季節・日常の手入れ
日本種春咲きエビネは野生ランの中では比較的育てやすい部類に入ります。種によって耐寒・耐暑性などが多少異なりますが、基本的には柔らかい日射しで風通しの良い場所を好み、夏の蒸し暑さや多湿、強い寒さを嫌います。性質を理解して「季節ごとにあった置き場所」を選び工夫することが大きなポイントとなります。
開花時期に強い光が1方向から当たると花茎が光の強い方へ曲がってしまうので、鉢をときどき180℃回転させてまんべんなく光が当たるようにするか、直接日の射し込まない明るい日陰に移動させます。
日当たり・置き場所
主にスギ林の下など柔らかい日が差し込む樹林下に自生し直射日光を嫌います。強い直射日光に当たると葉焼けをおこして葉が黄色っぽくなったり一部枯れて弱ります。
一年を通して半日陰の場所で育てますが、あまり暗い日陰だと花付きが悪くなるので注意が必要です。具体的には1日あたり朝日が3時間くらい当たれば生長に問題ありませんので、それを目安に場所を選んでください。例えば、北側の庭でも間接光で必要な日光が充分まかなえる場所は日当たりの良い南向きの庭よりエビネに関してはむしろ栽培に適しているといえます。寒冷紗を用いる場合は冬30%、春・秋40%、夏60-70%を目安に遮光を行います。
蒸し暑いのが苦手で夏は根の動きが鈍り全体の生育も弱るいわば「夏バテ」状態になることがあります。真夏はできるだけ暑さを避けた風通しの良い場所を選び、夕方以降に葉や周りに打ち水をするなど、できるだけ涼しい環境をつくります。サルメンエビネのように特に暑さに弱くて冷涼な環境を好み、夏にがくんと生育が衰えるものもありますので注意が必要です。
寒さには比較的強いですが、霜に当たると霜焼けで葉が黒く枯れてしまうので気をつけましょう。ニオイエビネを初めとする暖地性のエビネは寒さに弱く最低5〜6℃必要です。
水やり・肥料
おかしな言い方ですが「エビネの体はほとんど水でできている」と表現しても差し支えないくらい乾燥に弱い植物なので、水切れは禁物です。土の表面が乾きかけたらたっぷりと水を与えるようにします。ただし、常に用土が水に浸っているような状態では根腐れを起こしてしまう気をつけましょう。年々株が小さくなり充分生育できないのは肥料不足よりも水のやり過ぎによる軽い根腐れを起こしているケースがよくあります。水切れに弱いけども、水のやり過ぎも良くないですが適した土を用いて「土の表面が乾いてきたらたっぷり与える」を守れば大丈夫です。冬は休眠しているので、水やりの回数は控えめにします。
肥料は花後から秋まで液体肥料を月2回程度与えますが、真夏は暑さで根の動きが弱ることもあるので一旦ストップします。
用土
水はけのよい土が適しています。日向土(ぼら土)小粒4:赤玉土の小粒4:腐葉土2の割合で混ぜた土を用います。
植え替え・植え付け
植え替えの適期は新しい根が元気に伸び始める花後すぐの5月頃か9月中旬-10月上旬が適期です。鉢がいっぱいになって新芽の伸びるスペースがなくなりそれ以上生育できなくなったり、同じ用土で長い期間育てていると根腐れを起こすので1〜2年に1回は新しい用土で植え替えが必要です。
植え付け鉢から抜いた株は用土を軽く落として根をほぐし、根を水に浸して揺すり洗います。触ってみてスカスカになっている根や傷んで黒ずんだ根は切り落として整理します。鉢の底に大粒の日向土や軽石を1/4くらいの高さの位置まで入れ、新芽が鉢の中心になるように新しい用土で植え付けます。植え付ける深さはバルブ(葉の付け根にある丸く太った根茎部分)が半分くらい地表に見えるくらいが適当です。
エビネは新芽が伸びてその基部にバルブができます。そのバルブからさらに新芽が出てきて…という風に年々新芽の出る位置が横方向にずれていきます。ですから現在の新芽が鉢の中心にくるように植え付け翌年、翌々年と新芽の出るスペースを広く空けておくのです。
ふやし方
株分けでふやすことができます。株分けの作業は植え替え時、新芽に古いバルブ(バックバルブ)を2〜3個付けた状態で切り分けて一株とします。切り分ける際、位置をしっかり確認して元気な根まで切り落とさないように注意しましょう。あとは植え替えの要領と同じです。また、葉の付いていないバックバルブも2-3コずつに切り分けて湿らせた水ゴケに半分埋めておくと芽が出てきます。これをバックバルブふかしと言います。
かかりやすい病害虫
病気・害虫:ウイルス性の病気、ナメクジ、アブラムシ
エビネでもっとも恐ろしく、発生する確率が高いのがウイルス性の病気です。この病気にかかると葉や新芽に濃淡のあるまだら模様が出て、株の生育が弱り、花もちゃんと咲かなくなります。一旦かかると回復の見込みは少なく、健康な株に感染することもあるのでウイルス病と判断した株は処分するか隔離します。ウイルス性の病気はアブラムシや消毒が不十分なはさみなどを通してかかることが多いので、普段から害虫の駆除や器具の消毒などを行い感染ルートを断つよう努めます。
ナメクジは新芽や花を食害しますので見つけしだい駆除するか、誘殺剤などの薬剤を用います。
まとめ
水切れに弱いので、土の表面が乾きかけたら水をたっぷり
真夏の高温多湿を避け、風通しの良い場所で育てる
一年を通して、適した環境になるよう置き場所を工夫する
<転載、以上>
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エビネとは |
エビネ(Calanthe discolor) |