<Wikipediaより、転載>
タチツボスミレ(立坪菫、学名:Viola grypoceras)は、スミレ科スミレ属の多年草。日本で、ごく身近に見られるスミレ類の一つである。丸い葉と立ち上がる茎が特徴である。
【概説】日本のスミレ属は種類が多く、さまざまなものが各地に見られるが、花がほぼ同じ時期に見られるため、混同して扱われている場合が多い。種としてのスミレも普通種であるが、それ以上に普通種であり、日本を代表するスミレがタチツボスミレである。いくつかの近似種とともに広く見られる。
タチツボスミレとスミレは、次の点で違いが見分けられる。
タチツボスミレ V. grypoceras A. Gray茎は地中で短いが、成長すると茎は地表に伸びて立ち上がる。葉は始めは根出するが、茎が伸びると葉もそこにつくようになり、丸っこいハート形。花は薄紫。
スミレ Viola mandshurica W. Becker茎は地中で短く、立ち上がらない。葉はすべて根出し、細長い矛型。花は濃い紫。
【特徴】地下茎はやや短く、わずかに横にはい、古くなると木質化する。根出葉は細い葉柄があって、葉身は心形(ハート形)。葉にはあまり艶がない。花期は3 - 5月。花茎は葉の間から出て立ち上がり、先端がうつむいて花を付ける。花は典型的なスミレの花の形だが、スミレより丸っこく、花色は薄い紫が普通。
花期が終わると、葉の間から茎が伸び始める。茎は始め斜めに出て、それから立ち上がり、その茎の節々からも葉や花が出る。茎は高さ20センチ・メートルほどにまでなるが、年は越さず、次の春には、また地下茎から出発する。
北海道から琉球列島、国外では朝鮮南部、中国南部まで広く分布する。野原から山林内までさまざまな環境で見られる。垂直分布も幅が広く、本州中部では海岸から亜高山まで見られる。畑の周辺にもあるが、都会では本種よりスミレの方が優勢とされる。ただし個体数では本種が日本産スミレ中最大との評もある。
【変異】分布域が広く、その環境もさまざまで、個体変異も多い。いくつかの変種が区分されている。ただし、考え方によっては変種と認めず、そのいくつかを品種とするなど、若干の揺れがある。
コタチツボスミレ var. exilis (Miq.) Nakai:小型で葉は三角に近く、茎は横に這うようになりがち。近畿以西の本州から九州まで分布。
ツルタチツボスミレ var. rhizomata (Nakai) Ohwi:葉は小さく三角、茎は横に伸び、先端の芽が地表で新苗となる。多雪地帯に適応したものと考えられ、京都から新潟の日本海側に見られる。
ケタチツボスミレ var. pubescens Nakai:茎や葉に毛があるもの。本来はほぼ無毛。
シチトウスミレ var. hichitoana (Nakai) F. Maek.:伊豆諸島産。やや大型で、托葉の切れ込みが粗い。
【近縁種】さらにタチツボスミレの近似種もある。実際にはこれらが複数混在することもあるので、区別はなかなか難しい。
アイヌタチツボスミレ V. sacchalinensis H. Boiss.
地下茎は強く木質化。托葉は浅く切れ込む。北海道と本州の一部、カムチャッカ、朝鮮北部からシベリアに分布。
オオタチツボスミレ V. kusanoana Makino
高さ40センチ・メートルにもなる。北海道、本州の日本海側の山地から九州、朝鮮とサハリンに分布。
イソスミレ V. grayi Franch. et Sava.
花は茎からのみ生じる。北海道、本州日本海側の海岸砂地に生える。
ナガハシスミレ V.rostrata Pursh var. japonica (W. Becker et H. Boiss.) Ohwi
距が非常に長くてとがる。テングスミレとも。本州北部から鳥取県までの日本海側山地に分布、なぜか基本変種は北アメリカアパラチア山地に隔離分布。
テリハタチツボスミレ V. faurieana W. Becker
葉は厚くて光沢がある。本州北部日本海側に産する。
ナガバタチツボスミレ V. ovato-oblonga (Miq.) Makino
タチツボスミレによく似ているが、立ち上がった茎から出る葉が、根出葉よりも細長くなる。花はやや細み。本州中部以西から九州、朝鮮南部まで。
ニオイタチツボスミレ V. obtusa (Makino) Makino
花に香りがあることからの命名。花は丸っこくて紫が強く、中心部が白く抜ける。本州中部以西から九州まで、それに朝鮮に産する。全体に白い短毛があり、特に花柄はビロード状の毛が生える。
名前そのものはツボスミレと言うのもあるが、小さな白い花をつけるものであり、似ていないし近縁なものでもない。
【その他】1994年(平成6年)4月25日発売の430円普通切手の意匠になった。
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<転載、以上>