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葦牙(あしかび)は、葦の若い芽のことをいいます。

「古事記」には、様々な植物、植物名が登場しますが、その中でも「葦」は、日本の古名を「豊葦原の水穂国」と呼んだり、天地開闢のときに登場する五つの神「別天津神(ことあまつかみ)」の一つの神が「宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢのかみ)」と呼ばれたり、葦牙(あしかび)が度々登場します。

この言葉の意味する内容は、古代人にとって、どのようなものだったのでしょう。以下にご紹介します。

【古事記:別天津神<原文>】

天地初發之時於高天原成神名天之御中主神。
(訓高下天云阿麻。下效此。)

次高御產巢日神。次神產巢日神。
此三柱神者並獨神成坐而隱身也。

次國稚如浮脂而久羅下那州多陀用幣流之時
(流字以上十字以音)如葦牙因萌騰之物而成神名
宇摩志阿斯訶備比古遲神。(此神名以音)


次天之常立神。(訓常云登許、訓立云多知)
此二柱神亦獨神成坐而隱身也。

上件五柱神者別天神。


大文字の部分の意味は、

次に国が脂の浮くが如く稚くて、クラゲの様に漂っている時、(流以上の十字は、音読みです。)
葦の芽の如く勢いよく芽生えたものの成った神の名は宇摩志阿斯訶備比古遲神 ( うましあしかびひこぢのかみ )。(この神名は音読みです。)


『久羅下那州多陀用幣流』は、「クラゲの様に漂う」。「久(久しく),羅(網目の様に並ぶ),下,那(どの),州(島状の陸地),多陀(崩れる),用幣(布又は紙),流(流れる)」で「海に無数にある島の様に浮かぶ物が、流れる紙の様に漂う」という意味になります。『葦牙 ( あしかび )』は 、「葦の若い芽」という意味です。

また、古事記の現代、口語訳の訳者次田氏による解説を以下にご紹介しておきます。

<「古事記 全訳注」(次田真幸著/講談社学術文庫)より、転載>

国土の固まらない状態を、水面に浮かぶ脂や海月、水辺に伸びる葦の芽などを比喩に用いて語ったのは、難波あたりの水辺生活の体験にもとずいて語られたものであろう。

ウマシアシカビヒコヂノ神は、葦の芽に象徴された生命力、成長力の象徴である。大地の殻を破って萌え出る葦の芽、一日に十五センチも伸びるという葦の成長力を、古代人は驚異の目を持って眺めたのであろう。
「芦原の中国」「豊葦原の水穂国」「芦原色許男神」のように、「葦原」ごわが国の古称として用いられたのも、葦のよく茂る国、すなわち穀物のよく成育する国という意味であった。

<転載、以上>

古代の日本の風土、植生や土地柄とともに、葦の成長力を生命力の源とする文化背景があったようです。
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