【万葉集で詠われた「馬酔木」】

万葉集には、あしび・馬酔木を詠った10首の和歌があります。以下に一覧を掲載します。

2-0166:

<原文>
礒之於尓 生流馬酔木乎 手折目杼 令視倍吉君之 在常不言尓

磯の上に生ふる馬酔木を手折らめど見すべき君が在りと言はなくに( 大伯皇女(おおくのひめみこ))

<意味>
岩のほとりの馬酔木を手折ってあなたに見せたいのに、あなたが居るとはもう誰も言ってはくれない。

1128:

馬酔木なす栄えし君が掘りし井の石井の水は飲めど飽かぬかも

8-1428:

<原文>
忍照 難波乎過而 打靡 草香乃山乎 暮晩尓 吾越来者 山毛世尓 咲有馬酔木乃 不悪 君乎何時 徃而早将見

おしてる、難波(なには)を過ぎて、うち靡(なび)く、草香(くさか)の山を、夕(ゆふ)暮(ぐ)れに、我(わ)が越(こ)え来れば、山も狭(せ)に、咲(さ)ける馬酔木(あしび)の、悪(あ)しからぬ、君をいつしか、行(ゆ)きて早(はや)見む

<意味>
難波(なには)を過ぎて、草香(くさか)の山を、夕暮れに越えてくると、山も狭しと咲いている馬酔木(あしび)の、悪(あ)しからぬあなた(嫌いになれない大好きなあなた)にいつお会いできることかと思う。早くあなたに会いたい。

10-1868:

<原文>川津鳴 吉野河之 瀧上乃 馬酔之花會 置末勿動

かはづ鳴く吉野の川の滝の上の馬酔木の花ぞはしに置くなゆめ

<意味>
蛙(かえる)の鳴いている吉野(よしの)の川の滝(たき)の上の馬酔木(あしび)の花は(素敵な花です)、決してはしの方に置いたりしては(粗末、粗略に扱ったりしては)いけませんよ。


10-1903:

<原文>
吾瀬子尓 吾戀良久者 奥山之 馬酔花之 今盛有

我が背子に我が恋ふらくは奥山の馬酔木の花の今盛りなり(作者不明)

<意味>
あなたのことを、密かに思う私の心は、奥山に咲く馬酔木(あしび)の花のように、今、盛りです。

万葉池のパンフレットに掲載された歌です。
この歌がある巻十は、歌を四季ごとに分けて載せています。
雑歌
(春の雑歌:1812〜1889、夏の雑歌:1937〜1978、秋の雑歌:1996〜2238、冬の雑歌:2312〜2332)
相聞歌
(春の相聞歌:1890〜1936、夏の相聞歌:1979〜1995、秋の相聞歌:2239〜2311、冬の相聞歌:2333〜2350)
となっています。
この歌は、春の相聞歌のひとつです。この意味では、次の馬酔木の歌も同様です。前の歌は、春の雑歌です。
また、この巻十は特に、七夕に関する歌が132首もあるのが特徴的です。


10-1926:

<原文>春山之 馬酔花之 不悪 公尓波思恵也 所因友好

春山の馬酔木の花の悪しからぬ君にはしゑや寄そるともよし

<意味>
春山の馬酔木(あしび)の花のように素敵なあなたとなら、(関係があると)噂されてもいい。



3222: 三諸は人の守る山本辺は馬酔木咲く末辺は椿花咲くうらぐはし山ぞ泣く子守る山

4511: をしの住む君がこの山斎今日見れば馬酔木の花も咲きにけるかも

4512: 池水に影さへ見えて咲きにほふ馬酔木の花を袖に扱入れな

4513: 礒影の見ゆる池水照るまでに咲ける馬酔木の散らまく惜しも

<この項、作成中>
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