樹皮が黄八丈の染料に利用された

<樹木図鑑より転載>

八丈島に、古くから伝わる絹織物である「黄八丈」は、タブノキ(島ではマダミと呼ばれる)の樹皮を、染料として利用した。黄八丈の色は、鮮やかな黄色を主にして、樺色(「植物にゆかりの色」を参照)、黒色の三色がある。樺色を染めるのにタブノキの樹皮を使用する。ちなみに黄色はコブナグサというイネ科の草で染め椿の灰で媒染、黒色はスダジイの樹皮で染め泥汁で媒染する。それぞれの色の糸を縦横にして縞模様状に織り上げたものを「黄八丈」と呼んでおり、1977年に国の伝統工芸品に指定されている。

「黄八丈」の呼び名は戦後に使われるようになったもので、以前は「丹後」「八丈織」「八丈絹」などと呼ばれていた。守貞謾稿(嘉永六年 1853年)には「八丈縞」として「長け八丈なるにあらず。伊豆の南海中の八丈島にて製すところなり。」と紹介されている。
八丈島はもともと西方からの漂着船が多くあり、江戸時代以降は流形地としても利用された歴史がある。絹織物の技術は、西方からの漂着者や流形者によってもたらされ、進化したと考えられる。その発祥は定かでなく、室町時代には白紬が献納されたとされる。江戸時代には米による年貢の代わりに、絹織物を租税とすることが奨められた。江戸初期から中期にかけて黄色や樺色などの色が作られ、いわゆる「黄八丈」の染色技術が完成した。

「八丈島」と言う地名は、この特産品である絹織物の名が、そのままついたとされている。織物の1丈は約3mで、8丈の長さで絹織物は織られた。美濃八丈、尾張八丈、秋田八丈など各地にも特産品がある。

<現在の黄八丈の柄>


<転載、以上>
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万葉集に登場する「タブノキ」