<Wikipediaより、転載>

ザクロ(石榴、柘榴、若榴、学名: Punica granatum)は、ミソハギ科ザクロ属の1種の落葉小高木、また、その果実のこと。庭木などの観賞用に栽培されるほか、食用になる。

【分類】



ザクロは、ザクロ属2種のうち1種である。
ザクロ属の種は、ザクロと、東アフリカのソコトラ島産のソコトラザクロ(Punica protopunica)の2種のみである。



ザクロ属は、ミソハギ科に属す[。
Koehne (1881, 1903) は、下位に卵形の果実をつける3属、ザクロ属・ハマザクロ属 Sonneratia ・ドゥアバンガ属 Duabanga を、ミソハギ科と区別しそれぞれ単型科とした。すなわち、ザクロ属は単型のザクロ科 Punicaceae とした。しかし Johnson and Briggs (1984) などにより、それらが系統的にミソハギ科に含まれることが明らかになった。

亜種

ザクロは果実の色などから、2つの亜種に分けられる。

P. g. subsp. chlorocarpa
トランスコーカサス産
P. g. subsp. porphyrocarpa
中央アジア産

栽培品種

非常に多くの栽培品種がある。
この一覧は未完成です。加筆、訂正して下さる協力者を求めています。

ヒメザクロ P. g. 'Nana'[1]

【形態・生態】

葉は対生で楕円形、なめらかでつやがある。
初夏に鮮紅色の花をつける。花は子房下位で、蕚と花弁は6枚、雄蕊は多数ある。
果実は花托の発達したもので、球状を呈し、秋に熟すと赤く硬い外皮が不規則に裂け、赤く透明な多汁性の果肉(仮種皮)の粒が無数に現れる。果肉一粒ずつの中心に種子が存在する。

ザクロの食用部分である種衣は種子を覆う形で発達する
ザクロには多くの品種、変種があり一般的な赤身ザクロのほかに、白い水晶ザクロや果肉が黒いザクロなどがあり[11]、アメリカ合衆国ではワンダフル、ルビーレッドなど、中国では水晶石榴、剛石榴、大紅石榴などの品種が多く栽培されている[12]。日本に輸入され店頭にしばしば並ぶのはイラン産、カリフォルニア州産が多く[13]、輸入品は日本産の果実より大きい[14]。

【分布・生育地】

原産地については、トルコあるいはイランから北インドのヒマラヤ山地にいたる西南アジアとする説、南ヨーロッパ原産とする説およびカルタゴなど北アフリカ原産とする説などがある。

【栽培】

世界各地で栽培されておりトルコから中東にかけては特にポピュラーである。日本における植栽範囲は東北地方南部から沖縄までである。日当たりが良い場所を好む。若木は、果実がつくまでに10年程度要する場合もある。病虫害には強いがカイガラムシがつくとスス病を併発する場合がある。

【伝播】

新王国時代にエジプトに伝わり、ギリシア時代にはヨーロッパに広く伝わったとされる[15]。東方への伝来は、前漢の武帝の命を受けた張騫が西域から帰国した際に、パルティアからザクロ(安石榴あるいは塗林)を持ち帰ったとする記述が『証類本草』(1091年-1093年)以降の書物に見られるため、紀元前2世紀の伝来であるとの説があるが、今日では3世紀頃の伝来であると考えられている。日本には923年(延長元年)に中国から渡来した(9世紀の伝来説、朝鮮半島経由の伝来説もある)。

保全状況評価

LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001))[18]
Status iucn3.1 LC.svg

【人間との関わり】

語源

属名の Punica は「フェニキアの」を意味する Poeni に由来する。これは古代ローマの博物学者プリニウスが『博物誌』を著した当時、ザクロは「カルタゴのマルス」(mālus pūnica)としてカルタゴ周辺が原産地と考えていたためである。種小名の granatum は「種の」や「粒の」を意味し、英名の pomegranate(粒の多いリンゴ)は中世ラテン語の pōmum grānātum、pōma grānāta(種の多いリンゴ)に由来する。

中国語名の「石榴」および「安石榴」は、パルティアの王朝アルサケス(アルシャク:Arshak)を張騫が「安石」や「安息」と音訳したものであり、パルティアを意味する「安息国」に由来する。また、塗林と呼称した時代もあるが、これはサンスクリットでザクロを意味する darim、darima の音訳である。「榴」は実が瘤に似ていることに由来するという。

日本語の「ザクロ」は、石榴、柘榴の字音からと考えられており、呉音では「ジャク・ル」、漢音では「セキ・リュウ」となる[16]。『本草和名』では「安石榴、別名 塗林・若榴、和名 佐久呂」とされている。また、古代イランと中国の文化交流を研究したラウファー(英語版)は、若榴の中国語読みの「zak-lau」に由来するとの説を唱えている。
また、有力な原産地のひとつと考えられるティグリス川およびペルシア湾の東方にそれに平行してザグロス山脈がある。ザクロの呼称は、ザクロス山脈を現地音に近い「石榴」の字で音訳したともいわれている。

【観賞用】

日本では庭木、盆栽など観賞用に栽培されることが多く、矮性のヒメザクロ(鉢植えにできる)や八重咲きなど多くの栽培品種がある。江戸時代の園芸書である『花壇地錦抄』などに記載の見られる古典園芸植物のひとつでもある。

【食用】

<ザクロ、仮種皮のみ>
100 gあたりの栄養価

エネルギー 346 kJ (83 kcal)

炭水化物 18.7 g
糖分  13.7 g
食物繊維 4.0 g
脂肪   1.2 g
タンパク質1.7 g

ビタミン
チアミン (B1) (6%) 0.07 mg
リボフラビン (B2) (4%) 0.05 mg
ナイアシン (B3) (2%) 0.29 mg
パントテン酸 (B5)(8%) 0.38 mg
ビタミンB6 (6%) 0.08 mg
葉酸 (B9) (10%) 38 μg
ビタミンC (12%) 10 mg

ミネラル
カルシウム (1%) 10 mg
鉄分 (2%) 0.30 mg
マグネシウム (3%) 12 mg
リン (5%) 36 mg
カリウム (5%) 236 mg
亜鉛 (4%) 0.35 mg

●単位
μg = マイクログラム • mg = ミリグラム
IU = 国際単位
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)

●イラン のザクロのスープ、アーシェ・アナール

可食部は皮と種子を除いた種衣の部分で、生食される[14]。果汁をジュースとしたり清涼飲料水のグレナディンの原料とするほか、以下のような料理などに用いられる。

●グレナデン・シロップ(ザクロのシロップ)
シリアとレバノンでは、ザクロの果汁を濃縮して料理の味付けやサラダドレッシングとして用いる。
中東、北インド、メキシコなどでは、果肉の粒を煮込み料理やデザート、料理の飾り付けに用いる。

●ケーキ
ザクロの可食部に含まれる栄養素は右表のとおり。
また、乾燥した種子全体もインドからイランにかけて香辛料として使用される。

【薬用】

古くから以下のような部位が薬用に供されてきた。なお、以下の利用方法・治療方法は特記しない場合、過去の歴史的な治療法であり、科学的に効果が証明されたものであることを示すものではない。

【樹皮・根皮】

乾燥させた樹皮または根皮は、生薬名として「石榴皮」(ザクロヒまたはセキリュウヒ:Granati Cortex)または「石榴根皮」(セキリュウコンピ)といい、古くから条虫(特に有鉤条虫[4])の駆虫薬として用いられてきた。ディオスコリデスの『薬物誌』でも樹皮が駆虫薬として用いられている記述が見られる。近代になり、1884年Schröder によって駆虫薬としての有効性が科学的に証明され、過去にはイギリスやアメリカ合衆国の薬局方にも収載されていた。日本薬局方には初版より「石榴根皮」として収載され(後にザクロヒ)、第7改正まで収載されていた。石榴皮の主な成分は、0.3 - 1 % 程度の揮発性アルカロイド(ペレチエリン (pelletierine)、イソペレチエリン (isopelletierine)、プソイドペレチエリン (pseudopelletierine) など)と 23 - 28 % 程度のタンニン(プニカラギン(英語版) など)である。通常、駆虫には乾燥させた樹皮または根皮 30 - 60g を 300 mL の水に 5 - 6 時間に浸したものあるいは煎じたものを服用する。多量に服用すると中毒を起こす場合がある。
また、『和漢三才図会』では下痢、下血、脱肛、崩漏、帯下を止めるのに用いるとの記述がある。更に、口内炎や扁桃炎のうがい薬にも用いられたという。
漢方薬としては、石榴根皮、苦楝皮(クレンピ)、檳榔子からなる「石榴根湯」(せきりゅうこんとう)があり、駆虫に用いられる。

【果皮】

果皮を乾燥させたもの(石榴果皮:せきりゅうかひ)も樹皮や根皮と同様の目的で用いられることが多く、中国やヨーロッパでは駆虫薬として用いた。ただし、根皮に比べ揮発性アルカロイドの含有量は低く効果も劣る。また、回虫の駆除に用いられたこともあったようであるが、犬回虫を用いた実験では強い活性はみられなかった。日本や中国では、下痢、下血に対して果皮の煎剤を内服し、口内炎や扁桃炎のうがい薬にも用いられた。プリニウスは、果皮を利尿に用いるとしている。

【花】

粉末にした花(石榴花)は、出血性の傷に用いられた[3][24]。

【種子】

1964年Sharaf らが種子油(酸石榴)にエストロゲン活性があることをマウスを用いた実験で見出し、1966年Hefumann らによってこの活性がエストロンによることが示され、乾燥種子100g 中に1mg のエストロンが含まれることが1988年Moneam らによって確認され[32]、更年期障害や乳癌などに対する効果が期待された。ただし、エストロンの含有量が微量であること、経口摂取ではエストロンは肝臓で速やかに代謝されること、また、エストロンの生理活性はエストラジオールの10 分の1 程度であることなどから実質的な効果は疑問視されている。

【果汁】

果汁にエストロゲンが含まれるとして1999年から2000年頃にブームとなったが、流通しているザクロジュースやエキス錠剤等10 銘柄を用いた国民生活センターの分析では、いずれもエストロゲンは検出されなかった。

【その他の利用】

石榴口つき銭湯
ザクロの実は、銅鏡の曇りを防止するために磨く材料として用いられた。江戸時代の銭湯には湯船の手前に「石榴口」という背の低い出入り口があったが、これは「屈み入る」と「鏡鋳る」(鏡を磨くこと)とを掛けたものともいう。
古代ローマでは、ザクロの果皮は皮革をなめすのに用いられた。
木質は硬く、床柱や装飾用の柱に用いられる。
ザクロの根を干して、煎じて飲むと虫下しになるという伝統風習が、長野県阿智村や喬木村にある。

【文化】

フィリッポ・リッピ『聖母子とマリア誕生の物語』1452年頃
初夏に鮮紅色の花を咲かせ、他の樹木が緑の中で目立つため中国の詩人王安石は、『万緑叢中紅一点』(咏石榴詩)と詩に詠んだ。
花言葉は優美、円熟した優美、優雅な美しさ
日本の一部の地域では、凶事を招くとして忌み嫌われる場合もあるが、種子が多いことから豊穣や子宝に恵まれる吉木とされる国や地域が多い。トルコでは、新婚のとき新郎がザクロを地面に投げて割り、飛散した種子の数で、その夫婦のあいだに生まれる子どもの数を占った。

古代ローマでは、婚姻と財富を象徴する女神ジュノーの好物とされていた。
色が似ているガーネットを柘榴石と呼び、中世ラテン語の grānātum(種の多い)に由来する。

スペインのグラナダ (Granada) の地名は、ザクロの木が多く植えられていたことに由来する。
ユダヤ教では、虫がつかない唯一の果物として神殿の至聖所に持ち込むことを許された。
釈迦が、子供を食う鬼神「可梨帝母」に柘榴の実を与え、人肉を食べないように約束させた。以後、可梨帝母は 鬼子母神として子育ての神になったといわれるが、日本で作られた俗説に過ぎない。柘榴が人肉の味に似ているという俗説も、この伝説より生まれた。
エジプト神話では、戦場で敵を皆殺しにするセクメトに対し、太陽神ラーは7,000 の水差しにザクロの果汁で魔法の薬を作った。セクメトはこれを血と思い込んで飲み、酩酊して殺戮を止めたという。
ギリシャ神話の女神ペルセポネーは、冥王ハーデースにつれ攫われ、6つのザクロを口にしたことで、6か月間を冥界で過すこととなり、母・デーメーテールはその期間嘆き悲しむことで冬となり、穀物が全く育たなかったが、ペルセポネーが戻ると花が咲き、木々には実がついたという。このため、多産と豊穣の象徴とされている。ローマ神話ではプロセルピナといい、ザクロは復活の象徴となっている。
キリスト教では『聖母子像』でイエスがザクロを持っている図像もあり、後のキリストの受難を表す。

■画像■
<ザクロの花>


<転載、以上>

<ザクロの葉>