【巣鴨・駒込で一大発展を遂げた植木・花卉園芸】
＜以下、豊島区立郷土資料館特別展「植木屋のある風景」図録＜園芸都市のゆくえ＞より、転載＞
明治期になっても、駒込、巣鴨の植木屋たちの活躍には目を見張るものがあった。例えば、バラを代表とする外来の園芸植物を直接自らの手で輸出入しようと、彼らが発起人のメンバーに加わって、明治23年(1890年)には、有限責任横浜植木商会が、また明治28年には、東京植物株式会社が設立された。
この横浜植木商会は、現在の横浜植木株式会社の前身で、本サイトの園芸文化研究にある「明治期の花卉輸入の動き(こちら)」でその当時の詳細を見ることができます。
また、庭園築造、蔬菜栽培、果樹栽培、花卉栽培の振興発達をめざして、明治22年に設立された日本園芸会の創設にも参加している。
さらには、各植物の品種の特徴を明記し、番付に見たてた品種銘鑑のうちいくつかが、彼らによって発行されたことも、品種を後世に伝えていくという観点からも見逃せないであろう。
このような園芸の隆盛ぶりは、明治40年の「巣鴨町地史」に
「現今に至り、新業益発達して、最隆盛を極むるに至れり。殊に近年花卉・盆栽などの外国に輸出せらるる者年々増加し、前途有望なり」とあることからも裏付けられよう。
【植木屋名鑑に見る植木屋の分布と職業分化と郊外への生産地の移動】
＜以下の表は、「17〜19世紀江戸・東京近郊の花き園芸の発達と空間的拡散」(野間晴雄著)に掲載された野間氏が「東花植木�睫抄�(1876)」から集計した明治九年頃の東京の植木屋の業態別地域分布表です。＞
●実際の「東花植木�睫抄澄廚蓮�以下のものです。
その後の植木屋の分布を示すものの一つには、明治19年の「東京有名植木師一覧」もあります。
この一覧を集計したものも上記の野間氏の論文にあるので、以下に転載しておきます。
実際の一覧の複写したものも以下にご覧いただけます。
実際、巣鴨や駒込の植木屋は、徐々にその拠点を埼玉や輸入の弁から、横浜などにも移すことになったようです。その詳細も上記の豊島区の文献＜園芸都市のゆくえ＞から、その部分を以下に転載して、ご紹介します。
＜転載、部分＞
ところが、19世紀末から、20世紀初頭にかけて、駒込・巣鴨の園芸を担ってきた人物の相次ぐ死去、代替わりに伴う植木屋の廃業、日本の資本主義発展に伴う都市部への人口流入、すなわち都市化・宅地化の進行などにより、それまでの様相は急変する。
昭和6年刊行の『北豊島郡総覧』には、「旧時花卉・盆栽を業とするもの多かりしが、現時に於いて極めて少なく、僅かに盆栽を業とする者数か所に残るのみ」と記されており、かつて、日本の園芸界の中核にあった＜園芸都市＞駒込・巣鴨の姿をここに読み取ることはもはや困難である。
＜転載以上＞
そして、その移動先として、埼玉県の現在の川口市安行や鳩ケ谷、現在の大宮の盆栽町付近を上げています。その部分を以下に同じく転載して、ご紹介します。
＜転載部分＞
それでは、東京近郊の＜園芸都市＞は、この地を離れていったいどこへ行ってしまったのであろうか。周知の通り植木・花卉栽培は、各家の所有地のうちかなりの面積を植溜に利用するなど、広い土地を必要とする生業である。都市化、宅地化によって消えつつある当該地域の園芸にかわって、既に幕末、あるいは明治初期から駒込、巣鴨の植木屋たちと交流のあった埼玉県北足立郡安行村(現川口市安行)、及びその近隣地域が明治中期以降、新たな＜園芸都市＞として台頭してくるのである。
安行の園芸は、全国の植木の集散地という一面を加えながら、現在に至るまでその地位を保っている。しかし、安行においても近年の都市化・宅地化傾向は顕著であり、今やさらに遠隔地である茨城県、栃木県へと植木・花卉類生産の中心が移ってきているという。＜園芸都市＞は、広い土地が必要という動かしがたい大前提により、次第に都市から離れていく運命にある。
＜転載、以上＞
実際に明治中期以降のこの地での植木生産の隆盛は、明治40年(1907年)4月に「有限責任 安行植木販売組合」が発足したことでも想像されます。また、安行の植木販売の特徴として、早い時期からのカタログによる通信販売が挙げられます。生産者自身によるカタログの全国への送付とそれによる通信販売、植木流通業者を経由しての全国市場向けの販売などが、明治から大正期の植木の新たな需要を生み出していったのです。
実際、明治末年から昭和初年にかけて、駒込・巣鴨地域の植木屋のうちの相当数が現川口市安行や鳩ケ谷市方面に移住しています。一方で、現さいたま市大宮盆栽町へは、駒込神明町や団子坂の盆栽業者数軒が移住しました。この地域は、その後は全国的な規模で盆栽の専門家・愛好家を募り成立した、いわば“自治村”だったようです。その意味で安行などと成立の経緯が異なっています。
もちろん、埼玉などへの移転以外にも中野、世田谷、杉並などへの植木生産の広がりはありました。そうした地域での植木産業については、東京都内各地域の植木産業のカテゴリーをご覧ください
多摩地域での生産
●明治大正期の多摩地域での植木生産は、こちらをご覧ください。
＜以下、豊島区立郷土資料館特別展「植木屋のある風景」図録＜園芸都市のゆくえ＞より、転載＞
明治期になっても、駒込、巣鴨の植木屋たちの活躍には目を見張るものがあった。例えば、バラを代表とする外来の園芸植物を直接自らの手で輸出入しようと、彼らが発起人のメンバーに加わって、明治23年(1890年)には、有限責任横浜植木商会が、また明治28年には、東京植物株式会社が設立された。
この横浜植木商会は、現在の横浜植木株式会社の前身で、本サイトの園芸文化研究にある「明治期の花卉輸入の動き(こちら)」でその当時の詳細を見ることができます。
また、庭園築造、蔬菜栽培、果樹栽培、花卉栽培の振興発達をめざして、明治22年に設立された日本園芸会の創設にも参加している。
さらには、各植物の品種の特徴を明記し、番付に見たてた品種銘鑑のうちいくつかが、彼らによって発行されたことも、品種を後世に伝えていくという観点からも見逃せないであろう。
このような園芸の隆盛ぶりは、明治40年の「巣鴨町地史」に
「現今に至り、新業益発達して、最隆盛を極むるに至れり。殊に近年花卉・盆栽などの外国に輸出せらるる者年々増加し、前途有望なり」とあることからも裏付けられよう。
【植木屋名鑑に見る植木屋の分布と職業分化と郊外への生産地の移動】
＜以下の表は、「17〜19世紀江戸・東京近郊の花き園芸の発達と空間的拡散」(野間晴雄著)に掲載された野間氏が「東花植木�睫抄�(1876)」から集計した明治九年頃の東京の植木屋の業態別地域分布表です。＞
●実際の「東花植木�睫抄澄廚蓮�以下のものです。
その後の植木屋の分布を示すものの一つには、明治19年の「東京有名植木師一覧」もあります。
この一覧を集計したものも上記の野間氏の論文にあるので、以下に転載しておきます。
実際の一覧の複写したものも以下にご覧いただけます。
実際、巣鴨や駒込の植木屋は、徐々にその拠点を埼玉や輸入の弁から、横浜などにも移すことになったようです。その詳細も上記の豊島区の文献＜園芸都市のゆくえ＞から、その部分を以下に転載して、ご紹介します。
＜転載、部分＞
ところが、19世紀末から、20世紀初頭にかけて、駒込・巣鴨の園芸を担ってきた人物の相次ぐ死去、代替わりに伴う植木屋の廃業、日本の資本主義発展に伴う都市部への人口流入、すなわち都市化・宅地化の進行などにより、それまでの様相は急変する。
昭和6年刊行の『北豊島郡総覧』には、「旧時花卉・盆栽を業とするもの多かりしが、現時に於いて極めて少なく、僅かに盆栽を業とする者数か所に残るのみ」と記されており、かつて、日本の園芸界の中核にあった＜園芸都市＞駒込・巣鴨の姿をここに読み取ることはもはや困難である。
＜転載以上＞
そして、その移動先として、埼玉県の現在の川口市安行や鳩ケ谷、現在の大宮の盆栽町付近を上げています。その部分を以下に同じく転載して、ご紹介します。
＜転載部分＞
それでは、東京近郊の＜園芸都市＞は、この地を離れていったいどこへ行ってしまったのであろうか。周知の通り植木・花卉栽培は、各家の所有地のうちかなりの面積を植溜に利用するなど、広い土地を必要とする生業である。都市化、宅地化によって消えつつある当該地域の園芸にかわって、既に幕末、あるいは明治初期から駒込、巣鴨の植木屋たちと交流のあった埼玉県北足立郡安行村(現川口市安行)、及びその近隣地域が明治中期以降、新たな＜園芸都市＞として台頭してくるのである。
安行の園芸は、全国の植木の集散地という一面を加えながら、現在に至るまでその地位を保っている。しかし、安行においても近年の都市化・宅地化傾向は顕著であり、今やさらに遠隔地である茨城県、栃木県へと植木・花卉類生産の中心が移ってきているという。＜園芸都市＞は、広い土地が必要という動かしがたい大前提により、次第に都市から離れていく運命にある。
＜転載、以上＞
実際に明治中期以降のこの地での植木生産の隆盛は、明治40年(1907年)4月に「有限責任 安行植木販売組合」が発足したことでも想像されます。また、安行の植木販売の特徴として、早い時期からのカタログによる通信販売が挙げられます。生産者自身によるカタログの全国への送付とそれによる通信販売、植木流通業者を経由しての全国市場向けの販売などが、明治から大正期の植木の新たな需要を生み出していったのです。
実際、明治末年から昭和初年にかけて、駒込・巣鴨地域の植木屋のうちの相当数が現川口市安行や鳩ケ谷市方面に移住しています。一方で、現さいたま市大宮盆栽町へは、駒込神明町や団子坂の盆栽業者数軒が移住しました。この地域は、その後は全国的な規模で盆栽の専門家・愛好家を募り成立した、いわば“自治村”だったようです。その意味で安行などと成立の経緯が異なっています。
もちろん、埼玉などへの移転以外にも中野、世田谷、杉並などへの植木生産の広がりはありました。そうした地域での植木産業については、東京都内各地域の植木産業のカテゴリーをご覧ください
多摩地域での生産
●明治大正期の多摩地域での植木生産は、こちらをご覧ください。
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