トップ  >  桜草花名、命名研究  >  桜草名寄控・江戸末期  >  「唐」という表現 その2:「椿」の名称を見たてる?
唐衣
という種類の命名は、伊勢物語の

「第九段 東下り
むかし、おとこありけり。そのおとこ、身をえうなき物に思なして、京にはあらじ、あづまの方に住むべき國求めにとて行きけり。もとより友とする人ひとりふたりしていきけり。道知れる人もなくて、まどひいきけり。三河の國、八橋といふ所にいたりぬ。そこを八橋といひけるは、水ゆく河の蜘蛛手なれば、橋を八つわたせるによりてなむ、八橋といひける。…… その澤にかきつばたいとおもしろく咲きたり。それを見て、ある人のいはく、「かきつばたといふ五文字を句の上にすへて、旅の心をよめ」といひければ、よめる。」として歌われた

唐衣 きつゝなれにし つましあれば はるばるきぬる 旅をしぞ思ふ

という歌からの命名であったという見方があります。

平安の古くから、十二単衣に使われる「唐衣(からぎぬ)」を歌った歌ですが、この歌では、「からごろも」と読まれています。この歌からの命名だから、「からぎぬ」ではなく、「からごろも」ではないかと考えられたのでしょう。


「見立て」による命名

ただ、もうひとつの命名の可能性が考えられます。「見立て」という方法で、桜草を他の花に見立てて命名するという命名法です。
江戸時代、既に花・植木文化で先に流行していた良く知られていた「花」を見たてて命名したという見方です。

私は、特に椿の品種で
「桜草名寄控」以前の時代から命名されていた品種の中に

唐衣(からごろも)、唐糸(からいと、花壇地錦抄)、唐紅(からくれない)、唐獅子(からじし、本草花蒔絵)、唐錦(からにしき、本草図譜)
など、品種名に「唐」の付く品種が幾つかありました。

これらの椿の花の花姿などに「桜草」を見たてて命名したという可能性も高いように思います。

以下にこれらの椿の品種の幾つかの画像をご紹介します。
<唐衣>


<唐獅子>


<唐錦>


これらの同名の椿と比較してみるのも良いように思います。江戸時代の園芸ブームも京都での「椿」園芸ブームがその端緒でした。品種命名もそうした園芸ブームを受けていると考えた方が自然ではないでしょうか。
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