【万葉集で詠われた「山菅」がどんな花かには、幾つかの説が】

「山菅」は、万葉集では、菅を詠んだ歌を含めて、14首もの歌があります。原文では、山菅・夜麻須我などと表記されています。

山菅は、どんな花かには、以下のような説があるようです。

1)菅(すげ)
カヤツリグサ科の菅(すげ)です。

ただ、カヤツリグサ科のスゲ属(菅、Carex)は、身近なものも多いのですが、非常に種類が多く、同定が困難なことでも有名です。その総称として、「菅」が使われることが多く。日本でも数多くのスゲがみられます。以下にWikipediaにあるスゲ属の解説と品種一覧をご紹介します。

<Wikipediaより、転載>

スゲ属は、植物ではもっとも多くの種を含む属としても知られており、世界で2000種とも言われる。ほとんど全世界に分布するが、温帯域が中心である。日本では現在で200を越える種や変種が記録されており、毎年のように新しいものが報告される。

スゲ属 Carex

マスクサ亜属 Subgen. Vignea

マスクサ節 Sect. Vignea
マスクサ(マスクサスゲ)・カワズスゲ・コウボウムギ

ハクサンスゲ節 Sect. Heleonastes
ハクサンスゲ・オゼヌマスゲ

真正スゲ亜属 Subgen. Carex

コカンスゲ節 Sect. Decorae
コカンスゲ・ショウジョウスゲ

ヒカゲスゲ節 Sect. Digitatae
ヒカゲスゲ・ヒメスゲ・ヒナスゲ

シバスゲ節 Sect. Praecoces
ホンモンジスゲ・カンスゲ・ミヤマカンスゲ・ヒメカンスゲ・アオスゲ・モエギスゲ

ジュウモンジスゲ節 Sect. Indicae
アブラシバ・ジュウモンジスゲ

ナキリスゲ節 Sect. Graciles
ナキリスゲ・コゴメスゲ

クロボスゲ節 Sect. Atratae
イワスゲ・ナルコスゲ・タヌキラン・キンスゲ

サツマスゲ節 Sect. Occulusae
サツマスゲ・アカネスゲ

ヒゴクサ節 Sect. Extensae
ハリスゲ・マツバスゲ・シラコスゲ・カサスゲ・シラスゲ・ヒゴクサ・ジュズスゲ

タマツリスゲ節 Sect. Laxiflorae
ダケスゲ・タマツリスゲ・コジュズスゲ・タガネソウ

ミガエリスゲ節 Sect.Orthocerates
ジョロウスゲ・ミガエリスゲ

シオクグ節 Sect. Paludosae
オニスゲ・オオカサスゲ・オニナルコスゲ・シオクグ・コウボウシバ

アゼスゲ節 Sect. Carex
タニガワスゲ・アゼスゲ・ゴウソ・アゼナルコ・トダスゲ・テキリスゲ・カワラスゲ

<転載、以上>

2)ヤブラン
ユリ科の多年草。8月〜9月頃、林に良く見かけます。つやのある線形の葉と、紫色の小花を穂状につけた花茎が特徴です。

3)蛇の髭(じゃのひげ)
ユリ科の多年草で、冬に濃い青色の実をつけます。竜の髭(りゅうのひげ)とも言います。

<ヤブランとジャノヒゲの違いや見分け方>
ヤブランも線形の葉が叢生(そうせい)するところはよく似ていますが、葉の幅が1cmほどと幅広く、花穂がほぼ直立し、花色が紅紫色であることで容易に区別できます。また、種子も「黒色」に熟すので、「コバルト・ブルー」に熟すジャノヒゲの仲間とは容易に区別できます。


●万葉集の「山菅、菅」の歌●

0564: 山菅の実ならぬことを我れに寄せ言はれし君は誰れとか寝らむ

1250: 妹がため菅の実摘みに行きし我れ山道に惑ひこの日暮らしつ

2456: ぬばたまの黒髪山の山菅に小雨降りしきしくしく思ほゆ

2474: 山菅の乱れ恋のみせしめつつ逢はぬ妹かも年は経につつ

2477: あしひきの名負ふ山菅押し伏せて君し結ばば逢はずあらめやも

2862: 山川の水蔭に生ふる山菅のやまずも妹は思ほゆるかも

3051: あしひきの山菅の根のねもころに我れはぞ恋ふる君が姿を

3053: あしひきの山菅の根のねもころにやまず思はば妹に逢はむかも

3055: 山菅の止まずて君を思へかも我が心どのこの頃はなき

3066: 妹待つと御笠の山の山菅の止まずや恋ひむ命死なずは

3204: 玉葛幸くいまさね山菅の思ひ乱れて恋ひつつ待たむ

3291: み吉野の真木立つ山に青く生ふる山菅の根の.......(長歌)

3577: 愛し妹をいづち行かめと山菅のそがひに寝しく今し悔しも

4484: 咲く花は移ろふ時ありあしひきの山菅の根し長くはありけり

<以上>
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