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東京の公園の植物の現状を伝える
当時の東京市の公園の状態、特に植生、植物や樹木はどのようだったのでしょう?以下は、「東京市公園概観(東京市公園課編集1923-04)」の東京の公園の植物についての記述からの転載です。
<同書より、転載>
東京の公園は地勢その他の関係で非常に植物の変化に富み、公園施設として植え込まれたら植物は格別として、古来繁茂している樹木も比較的多い。
これは東京の地勢が、一方では台地で、一方は臨海の低地である関係の外に、公園地の多くが寺社境内であった関係上、種々の樹木が植えつけられたる上に、これらの古い樹木が、そのまま保存されていることが大いに関わっているのである。されど、これらの老樹大木は、都市の発展と共に、年々枯損し、追々貴重なその特徴を失いつつある。
<転載、以上>
ここでは、東京市のいうとことの公園が寺社地をその起源としている規模の大きな公園を指していて、大名屋敷などはまだ、その範疇に入っていないことがわかります。この記述に続く、実際の公園として、例証される場所とその樹種を見るとそのことが明確になります。
その部分を以下に転載します。
<同、部分転載>
例えば、芝、上野、麹町、白山などの杉、樅の密林は、殆ど枯れ果て、現在では、シイ、カシ類と落葉樹がこれに代わっている。芝公園の南半部、深川公園、浅草公園林は黒松の立派なものが多かったが、これも漸く樹勢が衰えてきた。
現在において割合の多いものは、常緑樹としては、シイ、カシの類で二三百年を経過したものが尚存在している。
落葉樹としては、公園の景姿を作る老大なものは、ムクノキ、ケヤキ、ソテツ等である。殊に浅草公園の公孫樹は、観音堂の周囲に配植されてあって、殆ど他に見ることができない程、立派なものが多い。
麹町公園にありては、スギ、樅(モミ)等は枯損したが、シイ、ヤマクスなどの老樹は、今尚鬱蒼としている。この公園には、数抱えもある老大なカツラ、トチ、キハダ等が残っているが、かかる老樹が市内に今尚あるは、大いに誇るに足るものである。
<転載、以上>
以上、数か所の大規模な公園を取り上げて、その樹種の変化を伝えています。その評価は、以前の寺社の杉、樅、黒松の鬱蒼とした林を老大、立派な大樹といった表現で、その評価を加えている点は、大木が信仰の対象だった時代からの傾向といえそうです。永く残っている樹種としては、シイ、ヤマクス、カツラ、トチ、キハダなどを上げている点も興味深いところです。
さらにこの後に公園の植生の全体傾向を大木から、灌木、草本までを詳細に概観しています。その部分も以下に転載します。
<同書、転載部分>
その他公園地に植えられたる植物にて、最も多いのは、
針葉樹では、アカマツ、クロマツである。ヒノキ類、カヤ、タウヒどはこれに次ぐものである。外国より輸入されたヒマラヤスギは、東京の地に適し、不健康な状態、汚濁した空気に耐えうる素質をもっていて、追々、ヒノキ、サハラの代用として植えられつつある。
常緑潤葉樹としては、シイを主とし、シラガシ、アカガシ、ウバネガシ、ツバキ、サザンカモチ、サンゴジュ、モッコク、ネズミモチ等が最も多く利用されている。
落葉花木としては、各種のサクラ、ウメ、ヒャクジツコウ、モクレン、ハクレン、コブシ、フジ等である。
落葉潤葉樹は、スズカケノキ、ユリノキ、アラギリ、エンジュ、ホオノキ、トチ、ケヤキ、ポプラ、ニセアカシア、エノキ、ムクエノキ、ハクウンボク、エゴノキ、カツラ、ミズキ、イテツ等、数え挙げるまでもない。その内で紅葉類は、殊に多く、ヤマモミヂを第一とし、タウカエデ、ソナレ、カムロマツ、キャラ等で潤葉樹としては、アオキ、ヤツデ、マサキ、ヒイラギ、ヒイラギナンテン、イヌツゲ、ツゲ、ヒサカキ、アセボ、ヂンチョウゲ、クチナシ等の常緑のものが最も多く植えられているが、その間にガク、アジサイ類、ドウダン、ユキヤナギ、シモツケ類、キンシバイ、ビジョウヤナギ等がある。
花木としては、主として、躑躅類であって、リュウキュウツツジ、キリシマ、サツキ、レンゲツツジなどでその他は花のみを目的とするのではないが、キョウチクトウ、ベケ、レンギョウ、ヤマブキ、ハナスオウ、ハギ、フヨウなどがある。
また、近頃生垣的に植えられるものとしては、ピラカンサス、マサキなどがある。
草本類としては、シャガ、ツワブキ、リュウノヒゲ、スゲ、イトラン、ギボウシ、ビナンカズラ、ツタ類がある。花壇用草花は詳細は省略する。
而してこれらの公園植栽用の植物の過半数は一般市場で購入しているが、尚一部市場にないものは、[市苗園において栽培している。苗園は、羽根木、大久保、野方などこれも墓地あるいは病院などの市所有地をこれに充てている。
<転載、以上>
この文献では、最後にあるように花壇用の草花の詳細は省略されていました。こうした公園の花壇用の草花や花卉園芸関連の情報は、こちらをご覧ください。
東京の公園の植物の現状を伝える
当時の東京市の公園の状態、特に植生、植物や樹木はどのようだったのでしょう?以下は、「東京市公園概観(東京市公園課編集1923-04)」の東京の公園の植物についての記述からの転載です。
<同書より、転載>
東京の公園は地勢その他の関係で非常に植物の変化に富み、公園施設として植え込まれたら植物は格別として、古来繁茂している樹木も比較的多い。
これは東京の地勢が、一方では台地で、一方は臨海の低地である関係の外に、公園地の多くが寺社境内であった関係上、種々の樹木が植えつけられたる上に、これらの古い樹木が、そのまま保存されていることが大いに関わっているのである。されど、これらの老樹大木は、都市の発展と共に、年々枯損し、追々貴重なその特徴を失いつつある。
<転載、以上>
ここでは、東京市のいうとことの公園が寺社地をその起源としている規模の大きな公園を指していて、大名屋敷などはまだ、その範疇に入っていないことがわかります。この記述に続く、実際の公園として、例証される場所とその樹種を見るとそのことが明確になります。
その部分を以下に転載します。
<同、部分転載>
例えば、芝、上野、麹町、白山などの杉、樅の密林は、殆ど枯れ果て、現在では、シイ、カシ類と落葉樹がこれに代わっている。芝公園の南半部、深川公園、浅草公園林は黒松の立派なものが多かったが、これも漸く樹勢が衰えてきた。
現在において割合の多いものは、常緑樹としては、シイ、カシの類で二三百年を経過したものが尚存在している。
落葉樹としては、公園の景姿を作る老大なものは、ムクノキ、ケヤキ、ソテツ等である。殊に浅草公園の公孫樹は、観音堂の周囲に配植されてあって、殆ど他に見ることができない程、立派なものが多い。
麹町公園にありては、スギ、樅(モミ)等は枯損したが、シイ、ヤマクスなどの老樹は、今尚鬱蒼としている。この公園には、数抱えもある老大なカツラ、トチ、キハダ等が残っているが、かかる老樹が市内に今尚あるは、大いに誇るに足るものである。
<転載、以上>
以上、数か所の大規模な公園を取り上げて、その樹種の変化を伝えています。その評価は、以前の寺社の杉、樅、黒松の鬱蒼とした林を老大、立派な大樹といった表現で、その評価を加えている点は、大木が信仰の対象だった時代からの傾向といえそうです。永く残っている樹種としては、シイ、ヤマクス、カツラ、トチ、キハダなどを上げている点も興味深いところです。
さらにこの後に公園の植生の全体傾向を大木から、灌木、草本までを詳細に概観しています。その部分も以下に転載します。
<同書、転載部分>
その他公園地に植えられたる植物にて、最も多いのは、
針葉樹では、アカマツ、クロマツである。ヒノキ類、カヤ、タウヒどはこれに次ぐものである。外国より輸入されたヒマラヤスギは、東京の地に適し、不健康な状態、汚濁した空気に耐えうる素質をもっていて、追々、ヒノキ、サハラの代用として植えられつつある。
常緑潤葉樹としては、シイを主とし、シラガシ、アカガシ、ウバネガシ、ツバキ、サザンカモチ、サンゴジュ、モッコク、ネズミモチ等が最も多く利用されている。
落葉花木としては、各種のサクラ、ウメ、ヒャクジツコウ、モクレン、ハクレン、コブシ、フジ等である。
落葉潤葉樹は、スズカケノキ、ユリノキ、アラギリ、エンジュ、ホオノキ、トチ、ケヤキ、ポプラ、ニセアカシア、エノキ、ムクエノキ、ハクウンボク、エゴノキ、カツラ、ミズキ、イテツ等、数え挙げるまでもない。その内で紅葉類は、殊に多く、ヤマモミヂを第一とし、タウカエデ、ソナレ、カムロマツ、キャラ等で潤葉樹としては、アオキ、ヤツデ、マサキ、ヒイラギ、ヒイラギナンテン、イヌツゲ、ツゲ、ヒサカキ、アセボ、ヂンチョウゲ、クチナシ等の常緑のものが最も多く植えられているが、その間にガク、アジサイ類、ドウダン、ユキヤナギ、シモツケ類、キンシバイ、ビジョウヤナギ等がある。
花木としては、主として、躑躅類であって、リュウキュウツツジ、キリシマ、サツキ、レンゲツツジなどでその他は花のみを目的とするのではないが、キョウチクトウ、ベケ、レンギョウ、ヤマブキ、ハナスオウ、ハギ、フヨウなどがある。
また、近頃生垣的に植えられるものとしては、ピラカンサス、マサキなどがある。
草本類としては、シャガ、ツワブキ、リュウノヒゲ、スゲ、イトラン、ギボウシ、ビナンカズラ、ツタ類がある。花壇用草花は詳細は省略する。
而してこれらの公園植栽用の植物の過半数は一般市場で購入しているが、尚一部市場にないものは、[市苗園において栽培している。苗園は、羽根木、大久保、野方などこれも墓地あるいは病院などの市所有地をこれに充てている。
<転載、以上>
この文献では、最後にあるように花壇用の草花の詳細は省略されていました。こうした公園の花壇用の草花や花卉園芸関連の情報は、こちらをご覧ください。
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