共生する森は、芝生や草原と異なり立体構造をしています。
高木、亜高木、低木、下草などの林縁群落とさらには土の中のミミズ、ワムシ、カビやバクテリア、ダニ類、もちろん木の実をついばむ鳥たちも重要な構成委員といえるかもしれません。
宮脇氏は、こうした林縁群落の重要性を以下にように述べています。

<転載、部分>

立体的な森は、裸地や草原、農耕地、都市域のような開放空間と、決してじかに接しているのだはない。
せいぜい幅50センチメートルから1メートルのマント群落と呼ばれる林縁群落によってまわりを囲まれている。
常緑広葉樹林帯のシイ、タブノキ、カシ林では、クズやカナムグラ、ノブドウのようなツル植物、またはウツギ、ツルウメモドキなど、さまざまな半分日陰、半分日向で生育する低木などがマント群落を形成している。このマント群落が、孤立した鎮守の森を開放景観域で森を守る番兵の役目をしている。

<転載、以上>

そして、さらに野鳥などとの共生にもこうしたマント群落が重要であることを以下のように述べています。

<転載、部分>

野鳥は開放景観で木の実や虫などの餌を食べ、十分食べこんだら林の中に逃げ込む。そして、林の縁の外敵を見通せるところで休息し、消化する。
ノブドウ、キイチゴ、トベラ、シャンリンバイ、ガマズミなどの林縁群落の構成種は、このように野鳥に運ばれて生育していることが多い。

<転載、以上>

そして、失われる森への対策を以下のように述べることも忘れていません。

<転載部分>

林の失われた住宅団地などでは、せめて生垣に土地本来のマント群落の構成種、たとえばマサキ、ムラサキシキブ、ヤマブキ、ウツギ、ニワトコ、マユミ、ガマズミ、海岸沿いでは、トベラ、シャンリンバイ、ウバメガシ、ハマヒサカキなどの林縁植物を使うとよい。

<転載、以上>

高木や亜高木が失われていてもマント群落を探すことでその土地の本来の植生が発見できることも多いとも述べています。
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講義資料B:「鎮守の森」(宮脇昭著)