<農業ネットからの情報を転載>

1.来歴

ユズは中国の揚子江上流が原産地で、四川省、湖北省、雲南省、甘粛省からチベットにかけ野生しているといわれる。我が国には、北京方面より朝鮮半島を経て渡来し、唐時代もしくは、それ以前に伝来したと言われるが、さだかでない。平安時代に作られた日本最古の医学書「医心方」や江戸時代の増訂南海包譜などにユズが記載されていることから、古く奈良時代から栽培され、薬用あるいは果汁を食酢として利用され、現在に至っている。

2.樹勢

樹勢が強く、直立性でかなり大木になる。実生樹は樹冠部と同じように根が深く入るが、カラタチ台では、主枝がホウキ状に伸長しても、根は浅いところに分布している。結実期に達した樹の春枝は細く小さい。長さは5〜15cmである。枝梢はやや粗生のほうで、するどいトゲを有する。葉はやや小さく、翼葉がある。花は単生し、花弁は白色。耐寒性は柑橘類中もっとも強く、東北地方まで分布している。ヤノネカイガラムシ、かいよう病には抵抗性である。カンキツトリステザウィルスには罹病性である。

<樹冠とは>
●樹の枝葉が水平、垂直両方向に向かって伸長し占有している範囲を樹冠という。若樹の時期までの根の分布は、樹冠の投影面積とほぼ同じである(地上の樹の姿をそのまま土に埋め込んだ形に根が分布)。樹齢が進むと、内部に樹冠無効容積(枝ばかりで葉が少なく光合成が行われていない)を生じる。

●果樹の植栽密度の適正度として、樹冠と樹冠の距離が用いられ、また、果樹の生産力の一つの表し方として、樹冠容積当たりの収量、結果数が用いられる。

3.果実

果実は球形〜扁球形で、重さ120〜130g。果皮色は鮮黄色であるが、遅くまで樹上におくと橙黄色になる。果皮の厚さは5〜6mmで厚くてもろい。果面は粗く、油胞は大きさ中程度、密度は中〜やや密で凹んでいる。じょうのう数は9〜11。種子数は25〜35個。果汁歩合は温州ミカンなどと較べて、はるかに低い(15〜20%)。
 果汁中の酸(以下リンク参照)含量は6%程度で、その90%近くがクエン酸であるが、10%のリンゴ酸のほかに、微量のギ酸、コハク酸などを含んでいる。糖度は2.5〜3%である。

<じょうのう、じょうのう数とは>
●カンキツ果実は花器を構成していた子房壁が発達してできたもので、開花期に子房内壁が突出し始め、生長して砂じょうをつくり果汁をためる。砂じょうを収めているじょうのうは花器の室が生長したもので、開花期にほぼ10〜12室と一定するが、砂じょう数は開花期以降に増加し、6月中旬頃に決定する。

<果汁中の酸について>
●果実に存在する酸の大部分は有機酸であり、酸っぱさの主成分である。酸の種類は、果実の種類や組織によって異なり、ミカンではクエン酸、リンゴ、ナシではリンゴ酸、ブドウでは酒石酸とそれぞれ存在する。一般に酸の濃度は、果実生長初期に高いが、その後は果実の種類により減少を続ける場合と、一度低下した後上昇し、再び低下する場合とがある。

●酸の役割は、貯蔵中の腐敗や酸化防止等品質保持に関与する。呼吸系に関与し、貯蔵すると糖は変化が少ないが、酸が減るというエネルギー現象をおこす。ミカンのクエン酸含量は1.0以下になると、酸味を余り感じなくなり食味が優れる。

4.収穫期

10月下旬から11月下旬。完全着色期は11月であるが、果汁歩合は7分着色ぐらいがピークで以後減少してゆく。

5.系統

ユズはカンキツトリステザウィルス(CTV)に対し感受性で、強毒系に感染すると樹勢の低下、果実の小玉化、かいよう性(凸型)コハン症の多発など、安定生産が不可能となることから、弱毒系CTVを保毒した優良系統として永野、清遠、公文系等が選抜されている。

1)永野系

土佐山村永野干城氏の園にある原木で、愛知県の種苗会社から購入した苗木の中から選抜された系統で、樹齢は比較的若く、カラタチ台である。
樹姿はやや開張で樹の大きさは中、樹勢は強であるが、ユズの中では弱い方である。他の系統に比べやや果形指数(128程度)が高く、やや扁平ぎみである。

<果形指数とは>

[]2)清遠系
 夜須町細川、清遠義倫氏所有の系統で、香我美町山南の苗木商から購入した木の中から選抜したものでカラタチ台で樹齢50年以上と言われている。樹姿は永野系と同じくやや開張性である。果形指数は124前後(1990〜1994年平均)で果頂部(以下リンク参照)は豊円〜やや豊円で、果皮の滑らかさは永野系と同じく中程度である。
果頂部

3)公文系

物部村頓定、公文靖氏が自園の実生より選抜したもので、現在は昭和41年にカラタチ台に接木し、これから更に選抜した樹を母樹としている。樹勢は永野系よりやや強いが、ユズとしては中程度である。果形指数は125前後(1990〜1994年平均)で果頂部は豊円〜やや豊円である。本系統は、物部村において最も栽培されている系統の一つである。

<転載、以上>
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