【和名:「児手柏・コノデガシワ」を調べる】

本来、柏は、ブナ科の樹木で、ヒノキ科のこの樹木が柏と呼ばれるのは、ブナ科の柏との関連というよりは、「カシハ」という言葉自体の古来からの意味が関係しているようです。

語源などを辞典で調べると、以下のよう。
<各文献より、転載>

<白川静著『字訓』(平凡社 1987年)>

かしは(柏・槲)
ブナ科の落葉喬木。(中略)葉は倒卵形で大きく、食物を盛って用いることがあった。(中略)柏(はく)は[玉篇]に「松柏なり」とあって、和名は「かへ」。これを「かしは」とよむのは、我が国での用法である。国語の「かしは」にあたるものは槲(こく)。その葉で柏餅を包む。


<堀井令以知編『語源大辞典』(東京桃出版 1988年)>

カシワ(柏・檞)
ブナ科の木。カシワ餅は、その葉で食物を包むから、その木をカシワと名付けた。食物を包めば、他の木の葉もカサノはと呼ばれた。沖縄では、芭蕉はカシノハとという。カサ、カシは炊ぐと関係のある語。カシワは炊ぐとハ(葉)の構成である。食物を盛る葉、食器の意味で日本書紀にも見える。「葉、此をばかしはといふ」と。

<松田修著『古典植物辞典』(講談社 1980年)>

[size=medium]かしは 今名:かしわ(ぶな科)
カシハの語源は、もとは飯食の物を盛る葉をかく呼んだものらしいが、その代表がブナ科のカシワで、今日も柏餅にこのカシワが用いられている。


<転載、以上>

このように柏・カシハは、食べるものを包むような葉の植物、樹木に付けられた名ということがわかります。コノデガシワも、ヒノキ科の樹木であるにも関わらずこうした名前がついているのは、そうした理由によるもののようです。
しかし、実際のコノデガシワの葉は、以下のようないかにもヒノキ科の葉なのです???
ただ、葉の特徴として、表裏が同じで、葉が直立して、子供が手を上げて並んでいるようにも見えるので、こうした名前になったのかもしれません。児の手というと、以下の白い花のような気もします。もちろん、食物を包むという「カシワ」の意味には程遠い気がします。

改めて、中国からの渡来してきた植物という意味で、漢語を調べると

漢語の柏(ハク;bo,bai)は、広くはヒノキ科の植物の総称

ということが解ります。古来中国では、ヒノキ科の植物が「柏」とされていたようです。その意味では、江戸時代ではなく、古くから「コノデガシワ」は、日本に渡来していた可能性が高いことが解ります。


◆画像◆
<コノデガシワの葉>


<コノデガシワの花>


<この項、続く>
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