日本の森を概観する

以下、同書からの引用(「」と太字でくくる)を元に日本の森の現在と本来の姿、その違いと変遷を知ることで今とこれからを考えるということをしてみたいと思います。

「ふるさとの木によるふるさとの森」の章で、宮脇氏は、

日本の森を
いずれにしても、日本の森は、条件のよい土地本来のところは広葉樹林、すこしきびしいところには、競争力は弱いが乾きすぎたり、湿りすぎるような極端な立地で我慢できる針葉樹が、局地的に、不連続に自生していた。

としています。まず、把握しておいて欲しい日本の植生の原点(気候的な要因からの原生、潜在的な植生)がこのことです。しかし、その後、人間の生活の影響下で森が変遷していくことを以下のように指摘しています。

しかし、人類が本格的に火を使うようになった1〜2万年前頃からは、森と対決し、さらに農耕が進み文明が発達した現代では、かたうて人類の生活には邪魔であった森林、とくに土地本来の森はほとんど失われてしまっている。

と、さらに
今、まわりにあるスギ、ヒノキ林のほとんどすべては、木材生産など経済的な目的で植えたものである。マツは、海岸のクロマツ林のように植生したものがあるが、アカマツ林のほとんどは様々な人間活動によって土地本来の森が失われたあとに二次的に生育している樹林である。

また今管理が行われなくなって、荒れていると嘆かれている里山の雑木林も、前に触れたように土地本来の森からはかけ離れた、二次林すなわち遷移の途中相の樹林である。

として、との土地本来の森の消滅を語っています。しかし、日本の森とその扱いの特徴として、

しかし他方においては、必ず土地本来のふるさとの木によるふるさとの森を残してきている。それが日本列島各地の神社やお寺や古い屋敷、山の尾根、急斜面、渓谷沿いに今なを残されている土地本来の森であり、国際的にも、今そのまま言葉が使われている『鎮守の森』である。

そして、次の章「森の主役となる木」で、日本の潜在植生を把握するための知識を提供してくれています。

<この項、了>
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