以下、前章の4項目ごとに地域の高齢者の課題と重ねて検討していきます。

1)何を、何を目的、目標に「学習」する?

<国の指針>
1)色々な経験をしてきているお年寄りだから、それぞれにあったきめ細かい教育プログラムを施しなさい。→多様な学習プログラム作り

簡単に「学習」といいますが、学校教育の指導要領のように、一体何を目的、目標に高齢者に学習をと考えているのでしょう?「きめ細かい」「多様」という表現を使うと丁寧な教育というイメージとなりますが、肝心の核となる「何を教える」「何のために」という部分が忘れ去られているように思えます。

それは、「より良く生きていくために」です。などという言葉が聞こえてきそうです。学校教育で、欧米教育でいう所の「社会的な自立」のためとされたように日本で高齢者はどのように社会における目標を設定されているのでしょう?

社会参加?もっと働いてもらうため?

次の項では、社会参加、ボランティアなどを述べていますが、この第一項目は、正に教育する内容を問うているのです。その意味では、「何を学ぶ」という視点が重要になります。学校教育での「学習科目とその内容」のような明確なガイドラインとその目標(学校教育での社会的な自立、就職などの明確な目標です)の提示です。

この発見は、正に「高齢者の社会的な役割と地域社会における位置付け」の発見になるのです。第一の課題は、このことです。


2)金を稼げ?年金行政などの失敗が生んだ金銭的に余裕のない人は、働け?生涯学ぶ権利を教育権として行使する市民への無償教育サービスと福祉充実は国、自治体の責任では

<国の指針>
2)経済的自立や社会的に役立つような(ボランティアなど)活動をさせなさい→自分でお金を稼ぎ、他に頼らないボランティア活動などもするお年寄りを目指せるような環境づくりをしなさい

金銭的に余裕のある人は、ボランティアもよいでしょう。無い人は、地域の無償サービスの中で、自ら経験してきた「知」を提供し、次の世代へとつなぐために他の世代(孫や子ども世代)との交流を国と自治体が支援するのが当然でしょう。そうした費用負担があってこそ、高齢者は「知」を提供できるようになるのです。それこそが次の課題となる「高齢者のいきがい」になるはずです。

3)生きがいの創出?それまで働いてきた「職業世界で果たせなかった新たな生きがい」の実現でしょうか?趣味に生きる?夢の実現が生きがいなのでしょうか?

<国の指針>
3)その中で自己実現や生きがい創出(高齢者のアイデンティティの確立)をさせなさい。→今、その住む・居住する場所で生きていくための高齢者のエゴ・アイデンティティを自ら探させなさい



4)それまでに地域コミュニティに参加できなかったようなお年寄りは、それまでの勤めてきた企業でのカンパニー・アイデンティティなどを忘れさせ、一から地域社会でのアイデンティティづくりを目指すように促しなさい→いままで多くの大人を地域コミュニティに参加させるようにできなかったので、そうしたお年寄りに初歩から、地域コミュニティへの参加の仕方を教える工夫をしてください。
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