江戸時代に幕府の直轄地となり、明治には、政府の管轄から、皇室の御料地にもなり、大正期に恩賜公園となった井の頭公園。

イヌシデは、そのいつ頃に植林されたのでしょう。御殿山のイヌシデは、樹齢100年を超えるものもあるようです。その意味では、大正期の恩賜公園開園時に植林された可能性が高いように思われます。イヌシデは、武蔵野台地に多く見られる品種でもあり、その生育範囲は広い地域に渡っています。前出の「公園・神社の樹木(渡辺一夫著)」では、この現在も井の頭恩賜公園で見られる「イヌシデ」について、以下のように記述しています。

<転載、部分>

終戦から70年近くが経ち、現在の御殿山の森は、イヌシデやコナラの大木が大井。アカマツの大木も見られるが、だいぶ少なくなってしまったようだ。
イヌシデは、もともと武蔵野の雑木林に多い木で、幹に見られる白黒の縦縞が美しい木である。その実はビールのホップのような、蓑虫のようなユニクな形をしている。
御殿山のイヌシデは、樹齢100年を超えるものもあるだろう。その太くごつごつした幹、さまざまな濃淡を見せる白黒の縞模様は、まるで野外美術館のオブジェのようにも見える。

御殿山は、柵で保護されている場所もあるが、木々の間を自由に歩ける場所もある。そこでは、たくさんの人が歩いていて、関東ローム層といわれる赤土は、カチカチに固まっている。不思議なのは、これだけ根元を踏まれても、イヌシデが枯れなかったことだ。イヌシデの根元は、大正時代から、今にいたるまでたくさんの人が踏みつけてきたし、戦時中にはトラックにも踏まれてきた。おそらく、踏みつけに弱い木は枯れていき、踏みつけに耐えられた木だけが生き残ってきたのだろう。多くの人に踏まれ続けながらも生き残り、武蔵野の面影を伝えるイヌシデは、御殿山の象徴ともなっている。

<転載、以上>

その樹勢の強さと風土に合ったという意味でで、イヌシデは、武蔵野の各所で森を形作っているようです。

イヌシデについての品種詳細は、本サイトの樹木研究のこちらのカテゴリーでご覧いただけます。
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