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矮性の鉢物用としては、山野草愛好家が栽培するのは、ほとんどがアポイキキョウ(俗称)と呼ばれるタイプのキキョウです。

【野生種としてのアポイキキョウ】
北海道アポイ岳(日高山脈の南端の山:標高810m)産の矮性タイプのキキョウがそれです。このアポイキキョウは矮性であっても、店頭で販売されているものは矮化剤を使用されたものが多く、初年度は矮性でも翌年には草丈が伸びてしまうものが多いようです。

実際のアポイ岳に原生している様子は、本サイトのキキョウ野生種研究のコーナーにある「アポイキキョウ」のコーナーからご覧いただけます。


【園芸品種としてのアポイキキョウ】
<資料提供:サカタのタネ>

園芸品種として、いつでも矮性で花つきの良いキキョウ品種をと育種開発されたのが、「美里紫(青紫色)」という品種で、さらに濃い花色で「はつむらさき」(1981 年)が発表されました。
これらも固定種でアポイキキョウのタイプでした。

その後、翌年以降も伸びずに矮性のものをと育種・開発されたのが、業界初のF1 品種「センチメンタルブルー」(1989 年)です。



日本の気候に良くマッチし、消費者は涼しげな青色の花を何年にも渡って楽しめ、生産者は3〜4寸鉢でピンチや矮化剤を使う事無くで容易に栽培・出荷できる品種を目的として、1980 年代に「アポイ」の矮性選抜系統と「はつむらさき」の矮性選抜系統を交配して本品種は作出されました。特徴は紫青色大輪種で、草丈20cm 前後でよく開花する品種です。1 本の枝に3〜5 輪咲く多花性で、切花品種を矮化させたような草姿です。2 年目以降も草丈が伸びず、一層花付きが良くなる性質を有しており、今もなお、多く流通するヒット商品です。発芽に要する日数が2〜3 週間と長く、発芽後の生育も比較的ゆっくりのため、2 月頃にタネを播くと、ゆっくりとした生育に心配される方が多いと思います。しかし、日長が伸び、温度が掛かってくると急速に生育速度が上がり開花に至るので、生育初期は長い目で見ながら育てることが必要です。


海外でも認められた、この「センチメンタルブルー」は、これを元に同業他社でも育種がされ、より大輪で株がコンパクトな「アストラ」シリーズ(1999 年)が開発されました。




この品種を育種した会社は鉢物王国のデンマークにあるデンフェルト社でしたが、2003 年にサカタのタネの傘下になりました。

<資料、以上>

サカタのタネのWebsiteにある「センチメンタル・ブルー」の詳細情報と購入は、こちらから。

【園芸種の和名はどこから?】
こうした現代の園芸品種の名称は、英語名である場合が多く、その命名の詳細は、各企業などに伺ってみるしかありません。
ただ、和名の場合は、その命名の由来を知ることが、その品種開発の背景を知ることになる場合があります。

「美里紫」の命名
和名の「美里紫」などは、ヤマアジサイの品種(茶花としても使われています)やスミレの品種にも同様の「美里紫」があることが知られています。複数の植物に同じ命名がされるには、その命名者や名称自体に意味があり、文化的な背景が見つかることも多くあります。
この「美里紫」という名称の背景やその歴史は、どんな事実があるのか、いつか調べてみたいものです。
以下にヤマアジサイとスミレの「美里紫」をご紹介しておきます。

<ヤマアジサイの「美里紫」>


<園芸品種の「美里紫スミレ」>:
リュウキュウシロスミレとリュウキュウコスミレの自然交雑種からの選抜種であり、沖縄県すみれ愛好会の登録品種
(沖縄すみれ愛好会のサイトより、画像を転載)
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