以下の章では、主にイギリスの庭園史を読み解くのに最適な文献として「森と庭園の英国史」(遠山茂樹著、文春文庫)を取り上げていきます。以下に「森と庭園の英国史より」と略しますとして転載します。

【チューダー朝の花、庭園文化の基本的な特徴】
<「森と庭園の英国史」より転載>

この時代は、花の種類も限られており、花は花壇というよりも、まずもって薬草園(ハーブ・ガーデン)であり、菜園(キッチン・ガーデン)であった。
こうした性格は、中世の修道院や城内につくられた庭と本質的に変わらない。庭の基本形は、矩形で、総じて、こぢんまりしたものが多かった。

<転載、以上>

この時代の庭は、中尾佐助氏が「花と木の文化史」で日本同様の外周型の庭をもつ文化として、アルプス以北の西ヨーロッパに見られる文化として、指摘している内容と重なってきます。

中尾氏は、この地域の庭文化を、日本と同じ外周型の庭をもつ第3の庭様式として、
「フランス、イギリスには現在も貴族や資産家の巨大な面積をもつ田舎の屋敷がたくさんあり、広大な外周庭園やブドウ園などをもっている。そして庶民の農家も小さいながらも外周型の庭をもっている。西ヨーロッパは15世紀から花卉園芸が発達しはじめるが、その住居様式が外周庭園型であって、植える場所がたくさんあったことが、その発達を促す一要因であった。」としています。

「森と庭園の英国史」では、さらにこの時代の庭の装飾特徴と形式で
結び目花壇(ノット・ガーデン)
というイギリス独自の庭園スタイルが登場したことを指摘しています。

次の章では、この「結び目花壇」について、紹介をしていきます。
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チューダー朝、16世紀の初期庭園文化
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エリザベス一世治世で発達した「結び目花壇(ノット・ガーデン)」