サトザクラと呼ばれる桜の園芸品種群のほとんど大多数は、この「オオシマザクラ」を親とした人の手による栽培品種であることが解っています。
オオシマザクラの自生地が相模、鎌倉、大島などという狭いエリアであることから、鎌倉時代、この地に幕府が成立し、その文化が後北条氏の関東、小田原支配まで続いたことがこうした園芸品種を登場させたという説を唱える多くの研究者がいます。しかもこの地方では、防風林や薪炭林に生長のよりオオシマザクラが植えられており、オオシマザクラを移植する習慣があったこともその説を裏付けています。

しかし、いまだに歴史文献でこの説の証明はなされていないようです。文献で多くの桜の園芸品種が一挙に登場するのは、江戸自体の「花壇項目」や「花壇地錦抄」以降のことなのです。

この説を唱える植物生態学者、植物民族学の中尾佐助氏によるとオオシマザクラから作出された桜の園芸品種は、以下の76種であることが氏の著作の『サトザクラ(園芸品種)百選の植物学的帰属』で説明されています。つまりサトザクラ100種中の76種という割合の多さを指摘しています。

<上記、文献からの76品種部分の転載>

普賢象、関山(かんざん、せきやま)、一葉、松月、福禄寿、白妙、楊貴妃、天の川、鬱金、御衣黄(ぎょいこう)、日暮(ひぐらし)、八重曙、菊桜、麒麟、朱雀、紅虎の尾、渦桜、法輪寺、御車返、祇女、五所桜、大提灯、江戸、九重、有明、白雪、駿河台匂、糸括(いとくくり)、千里香、早晩山(いつかやま)、雨宿、嵐山、旗桜、墨染、王昭君、牡丹、鷲の尾、水上、妹背、東錦、浅黄、苔清水、長州緋桜、兼六園菊桜、狩絹、御室有明、鬼無稚児桜、旭山、太白、突羽根、手弱女、胡蝶、名島桜、満月、名月(明月)、滝匂、類嵐(たぐいあらし)、真桜、小汐山、太田桜、奥都、金剛山、手毬、便殿、紫桜、玖島桜、福桜、大村桜、鵯桜、薄墨、紅提灯、梅護寺数珠掛桜、上匂、松前早咲、大芝山、八重虎の尾

<転載、以上>

<大島桜の分布域>
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オオシマザクラ(Cerasus speciosa (Koidz.) H.Ohba)